こんばんは名前変換( 38/56 )




「口紅、なくなってきたんだよね」
「それは俺に買えと言っているのかゆき」
「口紅もなくなったし、アイシャドウの新作も見たいし」
幸雄は勝敗をノートに書いている。
「別に、幸雄に買ってもらおうとも思ってないので」
と両腕を幸雄の首に絡めた。
「この手はなんだこの手は」
幸雄は私の手を持ってヒラヒラさせた。
「幸雄もいっしょにデパートに行って欲しい印!」
「はぁ…」
***
なんだかんだいっても、幸雄は2月の寒さでもチェスターコートにタートルネックで一緒に出かけてくれた。
「さーむーい」
と幸雄の人差し指を握ると、私の手を握りしめてコートのポケットの中に入れてくれた。
***
「先に口紅見たいんだけど」
「おう、このデパートの喫煙所どこ。決まったら電話して」
「ねぇ、ちょっと違うんじゃない。一緒に選ぼうよー。ねぇー」
「化粧品売り場、男入るの恥ずかしいんだけど。しょうがねぇなぁ」
幸雄はコートから出したタバコを戻した。
「今日はラメ入ってて、唇がしっとりする口紅が欲しいんだよね。色はまだ冬だしくすんだ赤とかにしようかな」
「んー、いんじゃないか」
「あそこのブランド見に行こうよ」
「はいはい」
私は幸雄の手を引いて比較的できたきれいめコスメブランドに入って行った。
「何かお探しのものはありますか」
「えっと…口紅さがしてて、ラメが入ったマットじゃないのがいいんですけど」
「わかりました。お色はどうなさいますか」
「青みよりの赤系の感じで」
「じゃあ、このリキッドルージュはどうでしょう」
「ありがとうございます、ちょっと試して見たいんですが…」
「少々お待ちください」
店員さんはカウンターに私と幸雄を座らせて去っていった。
「何、さっきの。グロスじゃん」
「あれは液体口紅」
幸雄は困惑した顔をしていた。
「おまたせしました。お客様のご要望の色だと、ラメなしならこのお色が2色。ラメありならこのお色が3色。いかがでしょうか」
「この色とこの色を試させてください」
「少し失礼しますね」
と店員さんにリップを塗られる。
「幸雄、どうかな」
「ああ、赤だな」
「似合ってるか聞いてるの」
「似合ってる似合ってる」
幸雄はきょとんとしながらそう呟いた。
「この色も試させてください」
リップを塗られている間、幸雄はブランドのカタログをパラパラ見ていた。
「どうかな、幸雄」
「さっきのより似合ってる」
と言って口角を上げた。
「私もめっちゃいい色だと思うけど、グロス重ねたいかな」
「グロスも買えってことか」
「…いーぜ。別に」
「幸雄だいすきー」
「恥ずかしいから」
睨まれた。
「仲がよろしいんですね」
と店員さんに笑われてしまった。
***
「ここのグロスが欲しいの!」
と老舗人気ブランドの中に入って言った。
「これ!」
「1発で決めたなあ」
「すみませーんテスターさせてください」
「かしこまりました」
カウンターに座らされてグロスを塗る。大ヒット商品だけあって、塗り心地もラメ感も最高だ。
「幸雄ー」
「これ買います」
「マジ?」
幸雄の決断は唐突だった。



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