こんばんは名前変換( 31/56 )




助手席は車を運転する平山さんの横顔が見える特等席だ。
「平山さん、今日はどこに行くの」
「内緒」
ほら、こんな時だって秘密主義である。
「平山さんはオートマ乗れるんだね」
「まあ、いろいろな車に乗らなきゃいけないシーンがあったからさ」
スカートの裾を直しながら、平山さんの過去を想像した。私みたいな平凡で平和な人生は送ってないのだろう。でもこうして、少しでも人生が交わったことが嬉しかった。
高速道路に入った。椅子に貼り付けられるほどスピードを出している。隣の平山さんはサングラスの隙間からでもわかるくらい、目が座っている。
「平山さん、スピード…出し過ぎじゃない」
「えーいつもこれくらいだし、普通でしょ」
…この人は無自覚なスピード狂だ。私は生きた心地もしないまま、西に沈む夕日を見て自我を保っていた。
高速を降りるとやっと規定のスピードになった。
「平山さん、よくこれでゴールド免許だね」
「あんまり、高速乗らないのもあるかも」
「ゆき顔色悪いけど大丈夫」
「大丈夫大丈夫」
あなたの運転のせいとはさすがに言えなかった。
平山さんはコインパーキングに車を停めて、助手席のドアを開けて手を差し出した。
「目的地はもうすぐだから」
5分ほど歩いたところによーく見ないと見えない、隠れ家的レストランがあった。
「ここ。ゆきと一緒に行きたかったんだ」



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