こんばんは名前変換( 30/56 )




眠気まなこでトースターに入れたトーストにジャムを塗る。今日は待ちに待った12月26日だ。トーストを乗せた皿はシンクに置いて、今日着る服をクローゼットの中から選ぶ。平山の隣だったらどんな服がいいだろうかと無意識に考えていた。ファーのついた真っ白なAラインのワンピースを選んだ。袖はレースになっていて、ウエストにはリボンがついてある。
今日はいつも以上にに丁寧にメイクする。いつもは使わない、なんとなくいい匂いのパウダーをはたき、丁寧にマスカラで。まつげを伸ばす。フローラルの香りの香水を内股に吹いた。髪も巻いたけれど、どうしてもワンピースのチャックのその上のホックが止められなかった。チェーン型のピアスをつけていたら、家のチャイムが鳴った。
「おはよー平山さん」
「今日は一段と綺麗、だな」
「平山さんがおしゃれしろって言ったからじゃん。でね、ワンピースの1番てっぺんのホック止めてくれない」
うなじをあらわにした。
「できたできた。俺以外の男には頼むなよ」
そう、耳元で囁かれた。
私はえんじのハイヒールを履いてアパートを後にした。
***
歩き慣れない高さのハイヒールをはいていたら、平山さんが
「ん、危ねえだろ」
と手を貸してくれた。
「ねぇ、平山さん、どこに行くの」
「とりあえず、5分先のコインパーキングだな」
「えー。私免許持ってないよ」
「そのための、俺じゃねぇか。いつもパシらされてたからよ」
私は平山さんの手をぎゅっと握った。
「ついたぜ、コインパーキング」
と平山さんが指差したのは、私でもわかる外車だった。
「平山さん、私、これに乗るの」
「俺が乗ってみたかったからさ、乗ってよ」
助手席が右側にあるのが新鮮で、車内をキョロキョロ見ていた。
「安心して乗ってくれて構わないから。免許ゴールドだし」

その言葉をちゃんと信じなくてよかった



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