こんばんは名前変換( 22/56 )




そろそろ上着一枚じゃ肌寒い季節、
私は平山さんに電話をかけた。
「もしもし、平山さん」
「どうした、ゆき」
「明日の5時頃、いつもの公園で会ってほしいです」
「それは…電話では済ませられない話か」
「…うん」
「わかった」
***
タンスから出したてのコートの身になじまない着心地の悪さにイライラしながら、予定より三十分も公園に早くつきすぎてしまった。自販機でカフェオレを買って暖を取る。携帯をいじっていたら、時間きっかりに平山さんは来た。ベンチに座っている私の隣に座って、
「もしかして、俺、遅れた」
と聞いてきた。
「私が早く着いちゃっただけだから」
微笑みながらとうに冷たくなったカフェオレの空き缶を握りしめる。
「最近、朝とか、晩になると寒くなるよね」
「まあ俺は空調の効き過ぎた部屋で打ってるからな」
「へー」
会話が続かない。カフェオレの空き缶を握りしめて考える。
「で、俺に聞いてほしい話って何」
平山さんは私の目を見つめてくる。
「それは…えっと」
真正面から改めて見ると、目の色素が薄いなあとかオールバックが似合ってるなぁとかどうでもいいことが思い浮かんでは消えてしまう。
***
「平山さん、私とお付き合いしてくれませんか。彼氏に…」
「無理だ」
私の勇気を出した告白は言い終わる前に、平山さんの言葉で遮られてしまった。
「なんで、なんでダメなんですか」
「俺よりいい男なんかゆきの周りは沢山いるだろ」
「そんな意地悪なこというの。私が好きなのは平山さんなの」
「俺はやめておけ」
ぺち…
私は手のひらを振りかぶって平山さんをビンタしようとして力尽きた。私の目からは無意識に涙が流れていた。
「なんで、そういうことを言うんですか。いっぱい思わせぶりなことして、平山さんと過ごした時間は私だけが楽しかったっていうの」
「それだけは、違う。ゆきと過ごした時間は俺の人生の中で貴重で新鮮な時間だった」
「私は、もう平山さんって人間がわからないよ!」
私は涙を流しながら叫んでしまった。
「申し訳ない」
平山さんはあの時、見たことがないくらい悲しい表情をしていた。しかし、わたしはそれに気づかず、
「謝んないでよ。余計惨めになる!」
誰にもこのぐしゃぐしゃの泣き顔を見られないように走って家に帰った。家に帰ったら号泣した。



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