こんばんは名前変換( 17/56 )




サークルのバーベキューに参加した。ただ漫然と下ごしらえをしていたら、例の同級生が来ていないことを先輩たちが酒のつまみにし始めた。人の噂話を聞きながら食べる肉は美味しいとは言えなかった。親切なOBの先輩の車から降りて、サークル仲間とのバーベキューは解散した。
茜色に染まった夕日を背にアパートへの坂道を登る。少し涼しくなったのか、三毛猫は公園の植木の下に隠れていた。そっとなでてみる
と、三毛猫はおなかを出してゴロンゴロンと寝転んだ。猫だってこんなに人に心を広
げられるんだなあと、バーベキューの後味の悪さが少しえずいた。
***
どっと疲れて、ベッドに横たわるといつの間にか夜になっていた。朝干していた洗濯
物を取り込むのを忘れていたことを思い出した。洗濯物は柔軟剤と夜の香りの混ざっ
た匂いがしていた。洗濯物を取り込もうとすると、一軒先のベランダで平山さんがタ
バコを吸っているのが見えた。私に気がついた平山さんはひらひらと手を振ってくれ
た。洗濯を取り込み終えた私はベランダから前乗りになってよく平山さんを見ようと
した。するとポケットに入っていた携帯電話がなった。
「落ちたら、あぶねぇぞ」
平山さんはベランダの手すりにもたれて、携帯電話を片手にニヤッと笑っていた。
「ねぇ、こんな距離で電話するなんて、糸電話みたいですね」
私はベランダの隅でしゃがんで携帯電話を握った。
「今日何してたの、平山さん」
「秘密」
「相変わらず秘密主義だね、平山さん。私はね、今日はねバーベキュー行ったんだ。
サークルの仲間とね。でも、平山さんといったお祭りのほうが楽しかったな」
「…そりゃよかったのかな…」
平山さんはタバコを消した。
「タバコの火ってさ、蛍の光みたいだよね」
「俺は蛍が嫌いなんだ」
「なんで」
「すぐ死ぬから」
そういって、紫煙を吐き出した。月明かりに照らされ、平山さんの横顔が強調されて思わず見惚れてしまった。
「月がきれいですね」
「ゴホッゴホゴホッ…え」
平山さんはなぜかタバコをむせている。
「え、月がきれいですねって…あ」
意味がわかった。夜だから、赤くなった顔はごまかせないかな。と思ったら、平山さんもベランダの隅にしゃがんで、目と目が合ってしまった。
「「えっと…」」



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