こんばんは名前変換( 16/56 )




射的の屋台でもまた平山さんは「アカギ」と呼ばれていた。
「アカギの旦那えらいべっぴんさん連れて、わし知らんかったわー」
「ははは、大将、射的2回分」
「しゃーない、ここはわしのおごりや。彼女にええとこ見せたりぃ」
平山さんがなんとなくどんな人と麻雀しているのかわかってきた気がした。そんな雑念を振り絞って、射的の銃にコルクを詰める。
パァン。
お菓子の箱には当たったけれど、斜めになっただけだった。そのあと、5回玉を使ってようやくコアラのマーチが取れた。一方平山さんはキャラメルを落とした。
「ありがとうございました」
「おおきに〜なかよぅしいやー」
大将は案外大きな声で言ったので恥ずかしかった。
「私たちの関係、みんなに誤解されてるね」
「しょうがないだろ。はぐれんなよ」
と手首を掴まれた。
***
「くじ引きやろうよ、くじ引き」
平山さんは怪訝そうな顔して
「あの店じゃないとダメなのか」
「だって、あの店しかくじ引きの店がなかったもん」
「そうか、そうだよなぁ」
私は平山さんの手首を掴んでくじ引きの店の前に立った。
「お、アカギさんじゃないですか。ご無沙汰しております」
アロハシャツを着た、痛んだ茶髪が特徴的な青年が挨拶する。
「いや、ここはそういうのじゃないから」
「あーはいはいわかりました」
「じゃあ、くじ引き一枚」
平山さんは高そうな財布から500円を出す。
「ありがとうね」
「じゃあ、この箱から引いてくださいどうぞ」
と青年はくじの入った箱を出してきた。
「お願いします…」
青年にくじを渡す。
「出ました、2等です。ここからここまでのぬいぐるみ、どれか選んでっていいからね」
青年はカランカランと鐘を鳴らす。私は流行りのサルのぬいぐるみを選んだ。待っていた平山さんは渋い顔をしていた。
「おねーさんまたきてねー」
青年は私に軽口を叩く。
***
「かき氷でも食いたくねえか」
平山さんの一言で神社の階段でかき氷を食べている。平山さんはレモン、私はブルーハワイ。
「ねえ、平山さん、なんで平山さんはアカギって呼ばれてるの」
「今度、話すから」
かき氷が溶け出して半分くらいになった頃。
「そろそろ、帰ろうか」
「えーまだ、9時30分だよ。まだ終電に余裕があるじゃない」
「いや、一緒に帰ろう」
「なんで」
「アンタが夜の街にいると俺が心配だから。また、遊ぶから、な」
平山さんの哀愁漂う表情には、相応の説得力があった。
「じゃあ、新しくオープンしたパンケーキ屋さんでもいい」
「いーよ」
「アイスクリーム屋さんでも水族館でもデパートでもいい」
「うん、だから今日は帰ろう」
「わかった」
私の当てたサルのぬいぐるみを持つ平山さんの姿はなんというか滑稽だった。



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