こんばんは名前変換( 14/56 )




夏祭りは3駅先の広場を中心に行われる。電車の中は、子供連れ、学生たち、浴衣姿の女の子たちで溢れかえっていた。電車が揺れると下駄でバランスが取れなくなった。電車の手すりにつかまると
「大丈夫、下駄は慣れてないだろ」
と平山さんは手すりを握ってない方のわたしの手首を掴んだ。いつもは色白で華奢に見えるけれどやはり男の人の手だった。
今日の平山さんはいつものオールバックを斜めに流して、メタルフレームのピンクのサングラスをかけている。おそらく平山さんなりに気を使ってくれたんだと思うけれど、やっぱりお昼にお仕事している人には見えない。そんなことを考えていると、お祭りの駅について、堰を切ったように満員電車から人が出ていく。私は平山さんを見失わないように、彼のポロシャツの裾を掴んだ。急いでICカードを巾着から出して改札から出る。
駅から出て広場に行くと、屋台がたくさん並んでいていつもの広場と違い、まるで別世界のようだった。平山とはぐれないようにポロシャツの裾をギュっと握っていたら、平山さんは私の手首を握ってきた。
「はぐれんじゃねえぞ」
そう耳元で囁かれた。
「アンタ、何したい」
「えっと、ヨーヨー釣りでしょ、金魚すくいでしょ、くじ引きでしょ、あとはかき氷といちご飴」
「あーなるほど見つけたらやりたいやつやればいい」
「うん」
平山さんに手を引かれて屋台を回る。
「金魚すくいやりたい」
私は巾着から財布を取り出そうとすると、平山さんが先に屋台のおじさんに千円札を渡していた。
「俺とこの子の分」
「はいよー」
ポイをもらってさっそく金魚をすくう。なるべく小さい金魚を端に寄せてすくう。6匹…ポイに小さな穴が空いた。7匹8匹、2匹同時にすくうとポイがダメになった。合計8匹だ。
「ねーちゃん意外とうまいな。連れのにーちゃんはてんでダメダメ」
「金魚は飼えないから持って帰れません」
そうして、金魚すくいの屋台から離れた。
「ねえ、平山さん。金魚すくい代ありがとね。それと、平山さんは何匹すくったの」
「秘密」
「えー教えてよー」
「1匹」
平山さんは笑う私を恥ずかしそうに睨みつけた。
「でも、アンタが金魚すくいに夢中になってるの見るのは楽しかったよ」
私は屋台をキョロキョロ見回す。
「ねえ、平山さん。りんご飴あるよ。いちご飴、あるかも」
私はりんご飴の屋台を指差す。りんご飴の屋台には色とりどりの飴が売ってあった。残念ながらいちご飴はなかったけれど。
「すみません、ぶどう飴ください」
「300円丁度確認しました、どれが好きなの持って行って頂戴」
目に付いたぶどう飴を選んだ。平山さんは私が飴を選ぶのをまって、祭りの本部に近い大きな木の前に立った。
「今から俺はアカギって名前で呼ばれるから合わせてくれ」
と耳打ちされた。



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