こんばんは名前変換( 11/56 )




蝉の鳴き声がうるさいスーパーの帰り道、いつもの公園のベンチの陰で三毛猫はのんびり涼んでいた。三毛猫は夏毛に生え変わったのか少し小さくほっそりとしていた。私が撫でても、三毛猫は拒まず、されるがままという風だった。背中がチリチリ熱くなってきたので、三毛猫にさよならを言って帰宅した。
***
玉ねぎをみじん切りにする。少し目が痛くなる。ズッキーニ、パプリカ、ナスは適当な大きさに切る。油を引いた鍋に、みじん切りにした玉ねぎをいれて半透明になるまで炒め、豚ひき肉を鍋に入れ、炒める。久しぶりに誰かのために料理をしている。自分一人のために料理をするよりやはり張り合いが出る。残りの野菜も香ばしく焦げ目がつくまで炒めて、トマト缶とカレールウを入れて一煮立ちさせる。カレー独特の匂いがして、味見すると私にしては上出来の味だった。
昼ごはんを食べて昼寝したら、午後5時だった。カレーの粗熱も取れていた。ちょうど平山さんが起きている時間なので、カレーをタッパーに入れた。
***
ピーンポーン
「平山さーん」
テロテロの柄シャツを着た平山さんがドアの中から出てきた。
「あー井上か」
生あくびを噛み殺しながら答えた。
「平山さん、嫌いじゃなかったら、夏野菜のカレー余ったから食べて欲しいなぁ」
本当は平山さんのために作ったのだけど。
「いらなかったら、別にいいんですよ。4日連続ごはんがカレーになるだけで…」
どんどん自信がなくなってうつむいてしまう。
「馬鹿、井上さんの傑作なら食べないわけないじゃねえか。タッパーはドアノブに掛けとくな」
そう言って平山さんは私の頭を撫でた。
「じゃあね!」
自宅に帰って、撫でられた頭の感覚を反芻していた。
***
2日後、自宅のドアノブにタッパーがかけてあった。家に帰って見てみると、一筆箋に達筆な文字で料理の感想が書かれていた。
「あれは夏野菜のカレー?なのかな。初めて食べたけれどとても美味しかったです。何か用事がある時のために一応俺の携帯番号×××-××××-××××」
心臓が跳ね上がりそうになり、あわてて電話を掛けていた。
「井上ゆきの電話です。よかったら登録してください」
留守電になったけどそれでもソワソワして眠れなかった。
午前4時平山さんから不在着信が入っていた。



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