こんばんは名前変換( 4/56 )




大学生というものはなんでこんなに飲み会というのが好きなのか。喧騒の中、存在の忘れられたお通しの枝豆を食べながら体にアルコールが沁みるのを感じる。
***
二次会のカラオケで喉がカサついているが今日は土曜日だ。帰って洗濯機を回して寝よう。暗かった空も明るくなってきた。
***
いつも人なつこい三毛猫のいる公園に立ち寄った。自動販売機で水を買って、お気に入りと思われるベンチの下を覗こうとした。しかし、ベンチには先客がいた。平山さんだ。
「どうも…」
どちらからともなく声をかけていた。サングラスの奥の眠そうな瞳で見つめられる。
「えっと…」
私はどう会話を紡ごうかオール明けの頭を必死に動かした。
「あ、ああ、今帰り?」
平山さんはそう尋ねた。セットした髪をクシャクシャにして思いっきりタバコを吸った。朝の平山さんは夜の平山さんより人間に近かった。
「そうですね」
「俺も今帰りだけど、一緒に帰ってもいい。行き先一緒だし」
「はい」
私が荷物を背負い直すと、平山さんはタバコを灰皿に押し付けた。
「井上さんは学生さんですよね」
「そうですよ」
「俺もキャンパスライフ?ってやつに憧れるんですよ」
「えー意外」
私は思わず笑ってしまった。
「学校は単位とるの大変ですよ」
「学校ってやっぱり楽しいんですか」
平山さんは真っ直ぐとした視線を向けてきた。
「それなりに」
「それなりかぁー」
平山さんもクククと笑い始めた。
***
「井上さんヒールでしょう。階段、寝不足で気をつけてくださいよ」
「大丈夫ですよ」
いつもの錆びた階段が少し色づいたのはたぶん気のせいだ。



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