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▼ 愛で縛ろう 02

 九条が襲われた日から四日後、天久の部屋には九条が居た。
『今日は土曜日で、明日は休みだから問題ない』
 そう言いながら九条が突然天久の元へ押しかけてきたのはつい先程の出来事だ。何が問題ないのか、天久にはさっぱり分からない。
 そんな天久の困惑オーラを察知したのか、九条はベッドに腰掛けネクタイを解いた。

「お前の戯言に付き合ってやるよ、今日だけな」
「ちょっと待て話が見えない」
「この前の借りを返すだけだ」
「借りがどうこうは置いといて、何で服を脱いでんだよ」

 残すは下着一枚だけとなり、今もなお混乱している天久に九条は不満そうに口を開く。

「セックスするのかしねぇのかどっちだ」
「そりゃしてぇけど……っておいおい何してんだ!?」

 天久の返事を聞くや否や下着も豪快に脱ぎ捨てて棚からローションを漁り出し、おもむろにアナルへ指を挿入し始めた九条を慌てて止めに入る。一体何が起きているのか。
 九条の奇行の理由を知らなければならない。まずはそこがはっきりしないことには、不気味で仕方がない。

「急にどうしたんだ九条」
「……ただの気まぐれだ」
「そんなに自分を安売りしたりしないだろ、お前は」

 本当の理由を言わない限り、進展する見込みはない。天久が頑固なのは、よく顔を合わせているので嫌という程九条は知っている。

「あの時、お前が俺を捜しに来たら少しは認めてやろうと思ってたってだけだ」

 天久はちゃんと九条を捜し出し、助けてくれたのだ。だから、その分の天久の願いを聞いてやろうという九条の考えまでは辿り着いた。が、天久は九条のことを愛したいのであって、九条とセックスがしたいだけではない。
 そのことを九条に話せば、心底面倒そうな顔をされ却下された。

「あー分かったよ、九条とセックスするかしないかだけ決めればいいんだな。する、します」
「よし、適当に解してちんこハメろ」

 何とも言えない顔をして九条を見る。こうなったら、身体から陥落させていくことも考えなければならないかもしれないと天久が作戦を組み立てる。

「徹底的に解すし可愛く啼かせてやるから覚悟しとけ」

 九条のペニスやアナルには触れず、首筋から鎖骨、胸、腹部、太腿へと、軽く啄むように口付けていく。胸の頂で秘かに主張している乳首を指先で弄ぶ。ピン、と芯を持ち始めたら、押し潰してみたり弾いてみたりして九条の反応を窺う。

「何やってんだ、さっさと突っ込んで終わらせろ」
「そんなムードぶち壊すこと言うなよ」

 乳首は要開発、と頭の中でマルを付けて丁寧に愛撫していく。九条を力技でひっくり返し、臀部だけを高く持ち上げた体勢にする。当然、文句と罵声が飛んでくる。だがしかし、今日だけは戯言に付き合うと言ったのは九条だと言い包めて続行する。

「ぐずぐずになるまでやめねーから」

 ツプリ、と人差し指をゆっくりと中に忍ばせる。性器への刺激を止めずに人差し指だけを抜き差しする。
 人差し指の動きがスムーズになったら、次は中指を足してより奥まで拓く。浅めのところで内側を探るように指で擦る。その動きが何をしているのか、気付いた九条は後ろを振り返った。

「おい、てめっ! やめ、っあ!」
「みぃつけた」

 しこりを撫でられる度にビクビクと身体を揺らし、上擦った声を必死に飲み込む。ガチガチに反り返ったペニスは指を動かす度にふるふると揺れ動き、解放の時を待ちわびているかのように先走りをとぷとぷと溢れさせている。
 まだ、まだ早い。じっくりと、周りを囲い込むように。指を三本に増やしてさらに解し拡げる。

「あ、んんっ! ん、ん、ふっ……」

 九条が自ら望むまで、終わらせる気はない。

「あ、めく……」
「どうした?」
「はやく、いれろ」

 赤く染まった目元も、涎の垂れた口元も、透明な雫を滴らせている性器も、何もかもおいしそうに見えた。

「どこに、なにを?」

 痛いぐらいに張り詰めた性器も早くと天久を急かすが、あと一押し九条の口から聞きたかった。
――今はまだ、好きだと言ってもらえなくて構わない。
 ただ、自分から強請る九条の姿くらいは見たいと思ってもいいだろうと欲を出す。九条の唇が、ニヤリと弧を描いていることに気付いた時には爆弾が投下されていた。

「俺の中を、愛で満たしてみろよ」
「それ、反則」

 九条をぎゅっと抱き締めて、天久は何度目かの愛してるを口にしながら熱を埋め込んだ。


END.

2016.1.10発行 web再録


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