俺様 | ナノ


 02



とある一室にて。

「今から作戦会議を開きます。柚、報告!」
「はい! 明日我が学園にぼさぼさ頭の編入生が来るとのことです。しかも理事長の甥で、副会長である水城様がお迎えに行かれるとのことです」
「つまり……皆分かってるとは思うけど、遂に僕達は『王道展開』が生で見れる時が来たんだよ!」

 息を荒げて前で力説している生徒に比例して、室内にいる生徒達もヒートアップしている。ざわざわと騒がしい室内には、部屋の広さに反してかなり大勢の生徒がいる。
 編入生が来るという情報は、まだ生徒会にしか知らされていないはずだった。なのに何故彼らは知っているのか。それは「やっほ〜みんな〜」とゆるーい挨拶をしながら入ってきた彼が教えたからだ。

「夏希遅い! 会議もう始まってるのに何のんびり入ってきてるの?」
「ごめんごめん。道に迷っちゃってぇ〜?」

 ゆるいパーマがかったふわふわな髪に、大きな瞳の可愛らしい顔をした、先程まで熱弁を振るっていた生徒が般若の形相で迎えた。それに対して、夏希は悪びれる様子もなくゆるく返している。

「どうして疑問系なの? 本当の事を言って!」
「男前×チワワちゃんのあはんうふんを偶然通りすがりに目撃して観察してましたゴメンナサイ」
「おのれ羨ましい……!」

 お察しの通り彼らは腐男子である。生BLが見隊、またの名を夏希親衛隊と言う。あくまでも正式名称は、生以下略の方である。
 夏希と話しているのは隊長の淡島凜。先ほど柚と呼ばれていた生徒は副隊長の柊柚。
 夏希とこの二人は一年の時からの友達で、この親衛隊は主に同人活動をしている。夏希目当てに入ってきた生徒達も、先人達の熱心な指導のおかげで、今ではすっかり腐の道を歩んでいる。

「王道展開はない可能性の方が高いよ〜。生徒会みんな会長にベタベタだしぃ〜、俺もだけどぉ」
「それは何となく察してはいたけど僕は王道派なの! でもメイドは萌えたよ夏希よくやったそして最近の会長様についてkwsk!」
「圧がすごい……いいけどさぁ、その代わりに今度のイベントの原稿手伝ってよ〜」
「よっし、乗った! 今夜は寝かせないぜ夏希ちゃん」

 念願の時期外れの編入生に異様なテンションになっている凛に、原稿のラストスパートに入っている夏希。この二人の暴走を止められる者はおらず、夏希と親衛隊員達は警備員に強制終了させられるまで語り合っていた。



「はぁ……さっさと案内して瑛に会いたいのに……」

 次の日の早朝、門で待つ那智は既に編入生より瑛のことを考えてばかりいた。
 編入生は予定の時間を過ぎてもなかなか来ない。穏やかで人付き合いも良さそうに見えるが、基本的に気の短い那智はかなり苛立っていた。初日に遅刻、それも何の連絡もなしときた。
 定刻までに来ない時点で生徒会室に行こうかと考えたりしていたが、那智が今ここにいるのは『副会長』としてなのだ。職務放棄と捉えられては困る。瑛の仕事を増やすわけにもいかない。

「はぁ……」

 外で待つのをやめて、門の脇にある守衛の小屋へと向かう。

「すみません、編入生が来るまでお邪魔してもいいですか?」
「どうぞどうぞ、こちらも声を掛けようかと思っていたところでしたので。水しかないんですけど飲まれますか?」
「ありがとうございます、いただきます」

 守衛は備え付けの小さな冷蔵庫から水の入った大きなペットボトルを取り出し、コップに注いで那智に手渡した。
 それから半刻ほど経ち、ようやくビーッと門のインターフォンが鳴った。やれやれと立ち上がり、那智は守衛に一言礼を述べて外へ出た。






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