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▼ ホワイトデー

 3月14日だ、待ちに待ったこの日を俺は遂に迎えた。そう、ホワイトデーだ!
 俺が何故この日を待ち望んでいたのか、――それはひと月前のことだ。



 俺は風紀委員長をしているのだが、仕事の関係でよく生徒会室へ行く。生徒会室にはなんとも可愛らしい俺のハムちゃんがいるのだ。
 『ハムちゃん』というのはあだ名で、公太郎という名前とハムスターっぽい仕草からハムちゃんというあだ名になった。その可愛い可愛いハムちゃんが、なんと! バレンタインの日に有名な一口サイズのチョコレートをくれたのだ。
 市販の安いチョコレートとはいえ、ハムちゃんから貰えたことに俺は歓喜した。勢い余って抱きついたら指をがじがじと噛まれ、生徒会のオカン的存在である副会長の後ろに逃げられたが。
 そんな怖がりで恥ずかしがり屋なハムちゃんの可愛らしい姿に、思わず息子が元気よく立ち上がりそうになったが、強靭な精神力で耐えて平静を保った俺を誰か褒めてくれ。
 そう、話が逸れかけたが、そのバレンタインのお返しをすべく、俺は今まで様々な案を練ってきた。甘い物に目がないハムちゃんは、警戒心は強いもののお菓子に釣られる傾向がある。
 バレンタインのお返しにチョコレートを用意したから部屋まで来てくれ、と連絡すれば、分かったという返事が返ってきた。数十分後、訪問者を知らせるチャイムが鳴った。
 開いてるから入ってくるように言えば、ハムちゃん用に置いてあるもこもこのスリッパをぱたぱたと鳴らしながら俺の愛しのハムちゃんがリビングまでやってきた。
 その瞬間、ハムちゃんの目がまん丸になった。

「なに、やってんだ……?」
「何って……ホワイトデーだからホワイトチョコ、」
「何でちんこに塗りたくったんだよ」
「だからホワイトち○こ」
「そうだ、お前あほだった……すっかり忘れてた」

 そう、俺は自慢の息子を真っ白にデコレーションしている。

「さぁ受け取れ! じゃないな……舐め取れ?」
「……」
「あ、指をがじがじするのはいいけど息子は駄目だからな」
「……あほだから仕方ないか」


 この後はホワイトチョコを受け取ってくれたハムちゃんに、俺の(以下略)もプレゼントした。苦い、と少し噛まれかけてヒヤヒヤしたが、俺の立派な息子は無事に救出された。
渡した水をこくこくと飲んでいるハムちゃんが可愛くてつい抱きしめてみたら、また驚いたハムちゃんに噛み付かれた。
 でも、今度は逃げずに俺の方へ振り向き唇に噛み付いてきたのだ。はむはむと、ぎこちないそれが愛おしくてそのままおいしく頂いた。



ホワイトデー
(もう白くなくていいです)




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