捧げ物 小説 | ナノ


勉強や実習などとは離れた生活ができる休日。
何人かゲームをしたり、どこかに遊びに行ったりする中、やたらと明るい雰囲気を感じる女の子が廊下をスキップしていた。

「ミエルー!遊びに来たよ〜!!」

鍵のかかってないドアを開けると、いつも行っているぬいぐるみいっぱいの部屋に、普段とは少し雰囲気の違う少女が顔を出した。

「あ…、いらっしゃい。ごめん、ちょっと散らかってて。」
「平気平気。ミエルの部屋がぬいぐるみだらけなのはいつもの事でしょ?」
「……。」

いかにも子供部屋のような寮室にいたのは、その部屋とは場違いな程大人のような雰囲気の少女。
先ほど遊びに来た少女、キャンディの親友のミエルだった。

「でもどうしたの?エプロンなんかして。」
「あ〜、ほら。もう直ピクニックだし、弁当のおかずでも作っておこうかなって。」
「弁当?わぁ、すごい!!これ全部ミエルが作ったの??」

寮の厨房に行くと、ハンバーグに卵焼き、ウィンナーにサラダ等、たくさんのおかずがずらりと並んでいた。

「うわぁ、美味しい!!こんなに美味しいもの作れるなんてミエル凄いね!!」
「そんな事ないと思うけど…。」
「んーん!!とっても凄いよ!!どうすればこんなに美味しく作れるの?あ、もしかして花嫁修業中??」
「違うよ。ただお母さんがご飯作るとき手伝ってただけだから。」
「なあんだぁ〜。残念。」

キャンディの実に女の子らしい発想に戸惑うミエルだったが、彼女もまたキャンディとの会話を楽しんでいる。
もうすぐやって来るピクニックを迎える少女の会話は実に微笑ましい出来事だった。

少なくとも、現在の会話までは…。

「あれ?そう言えば、唐揚げとかえびふりゃーとか無いね?」
「ああ、作ってないの。材料とかあまり無かったから。」
「嘘!?お弁当と言えば、唐揚げやコロッケとかの揚げ物は基本でしょ?何よりえびふりゃーは必須よ!!」
「きゃ…キャンディ?」

いきなりの発想、それも全く予想しきれてない発想に、ミエルはどう言い返せればいいのかわからなかった。
いや、待て。確か『えびふりゃー』と言うのはキャンディの思いの人の好物だったはず。
きっと弁当のおかずにして、その人に食べさせたかったのだろう。

「で、でも…作り方わからないし…。」
「じゃあ、私が作る。」
「……え?」
「大丈夫大丈夫。ただタネに具を入れて揚げるだけでしょ?任せなさいって!」

そう言うとキャンディはミエルを台所の外に出し、料理を始めた。
途中でミエルが様子を見ようとしたが、すぐにバレてしまい失敗に終わってしまったのもしばしば…。

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