マジバケ5つ星 | ナノ


雲一つない青い空、魔法学校ウィルオウィスプでの一日がまた始まろうとしていた。
授業のチャイムが鳴ると、クラスの生徒達は皆自分の教室の席に着き、それぞれの先生の授業を受けている。
たった1つのクラスを除いて…

「はい!じゃあ先生が来るまで自習!」

教卓に立っていたのはそのクラスの生徒達とほぼ同年代の少年であり、そのクラスの学級委員でもあるノアゼット。
担任の先生であるマドレーヌがまだクラスに来てないため、前の授業の復習をやっていたのだった。
そんな復習が終わっても先生は来る様子がなく、やる事のなくなった生徒達はお話をしたり遊んだりしていた。
ずっと教卓で復習の指導をしていたノアゼットはくたびれたかの様な表情で席へと戻って行った。

「お疲れ〜。今日も苦労すんなぁ。」

席に着いたノアゼットを宥めたのはポモドーロとシュガー。
自分の背中を叩きながらゲラゲラ笑うポモドーロを見て、ノアゼットはますます不機嫌になっていく。

「何で毎日毎日こんな事しなきゃいけないんだ…」
「学級委員だからでしょ?もう少ししゃんとしなさいよ。」
「それにあそこまで詳しく前の授業の内容教えられるのもお前だけだしな。流石は教師の息子だぜ。将来はお前もこの学校の先生になるのか?」
「バカ言うな。父さんの後次いで先生になるなんて僕はゴメンだ。この学校に入ってから僕がどんな思いしてきたか…。」

自分の親が自分の学校の先生と言う理由で担任には問答無用で学級委員にさせられ、挙句の果てには復習の指導までさせられている。
クラスメートにテスト範囲教えてもらって欲しいと頼まれたり、成績あげるよう頼んで欲しいとせがまれたりするだけでも面倒なのに、担任の不真面目な態度のせいでノアゼットはまさに災難の時を迎え続けていた。

「にしても、こんな時間になってもマドレーヌ先生が来ないなんてよう……一体どう言う事なんだ!?」
「どうせまた遅刻でしょう?いつもの事よ。騒ぐような事じゃないわ。」
「ハァ……今年30回目の遅刻なノ……。」

3人の会話にサンショウウオのチャイも混ざった。1回や2回なら兎も角、30回も遅刻するとは、こんなのが担任では生徒達の未来が逆に心配だった。

「おかげでこっちは30回もこんな事しなきゃならないんだぞ。今日と言う今日は何があっても抗議させてもらう。」
「まあまあ、そんな事言わずにさ、俺の補修の助っ人として一肌脱いでくれよ。」
「お前は少しは真面目に授業受けてくれ…。」

フォローのつもりで言ったと思うが、落第が続いているポモドーロの言葉にノアゼットはただ呆れるばかり。
そんな中、そんな彼の気持ちも知らずに隣で古代機械のカフェラテとニコニコしながら話をしている少女を見て、ノアゼットは急に眉を顰めた。

「おいシャルロット!!お前は僕がこんな思いしてるって言うのによくそんなヘラヘラいられるな!!」
「ふぇ!?!?何で急に怒るの!?先生が遅刻したの、うちのせいじゃないじゃん!!」
「おいおい、ロッティに八つ当たりすんなよぉ。気持ちは分かるけどさ……。」

理不尽に怒鳴られたロッティ事、シャルロットは思わず泣きだした。シャルロットはノアゼットの親戚であり、ある意味家族と言えなくもない。そんな彼女のフォローが受けたかったのだろうが、急に怒鳴り散らすのは流石に可哀想だろう。
そんな中、教室のドアの前に立っていたウサギのジャスミンが急に叫んだ。

「来たよっ!」

どうやら担任のマドレーヌが来たようだ。生徒達が一斉に席に着き、先ほどまで騒がしかった教室が静まり返った時だった。
いきなりドアがバンと音を出しながら開くと、物凄いスピードで駆け付けたマドレーヌが教室へ入ってきた。
ポニーテールをした彼女の額から汗が流れ、やや疲れたような表情は彼女がどれだけ慌てて走って来たのかをその場で教えていた。

「おっ、おはよーっ!皆!ちょっと遅くなったけど、皆ちゃんと自習してくれてたかな〜?」

誤魔化すかのように明るく語るマドレーヌだったが、返ってきたのは生徒達の冷ややかな視線だった。

「ブ〜!ブ〜!先生!遅刻デス!!」
「先生〜しっかりして下さいよ〜。俺が今年も落第したら先生のせいですからね〜!?」
「僕ももうあんたのフォローするのはうんざりなんだ!!僕は助教授じゃないんだぞ!?担任として少しは真面目にしてくれ!!」
「あははは!ごめんね皆!今日で遅刻はおしまい!もう絶対遅刻しない!あはは……あはははははは!」

次々と来る生徒達のクレームにマドレーヌは誤魔化すように笑うばかり。そんな担任を見て、生徒達は呆れた表情をしたり、溜息を吐いたりしていた。


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