マジバケ5つ星 | ナノ


強い砂風が吹いている砂漠、木や花などはどこにも見当たることなく、砂と岩の崖のみ存在する荒れた砂漠。そのど真ん中に、砂の色に馴染めてないミント色のロケットが突き刺さっていた。
そのロケットの内の1台に乗っていた少女、シャルロットは着陸の時に起きた衝撃によりロケットから吹き飛ばされたものの、柔らかい砂の上に落ちたので幸い大きな怪我には及ばなかった。
髪に纏わりついた砂を掃いながら立ち上がり辺りを見回すも、強い砂風に視界を遮られ、ジャスミンを探す事がかなり困難な状況だった。

「ジャスミーン!!いたら返事して!!」

同じくこの地に落ちたジャスミンを探しに周辺を歩いていくと、シャルロット自身が乗っていた物と同じロケットが目に映った。隕石にぶつかった衝撃のせいなのかかなりボロボロになっており、そこからそれほど遠くない所でジャスミンが倒れているのが見えた。

「ジャスミン!!」
「うっ……みっ…水……。」

顔色が良くないジャスミンはロケットを指さしながら水を要求していた。ロケットに行ってみると、ジャスミンが持ってきたのかロケットに装備されていたのか、飲用に問題なさそうな新鮮な水が入ったボトルがあった。
そのボトルをジャスミンに渡すと、ジャスミンは何日も水を飲まなかった人のように勢いよく飲み干した。

「ぷはぁーっ。あ、あれ……?ロッティ!?てことは…ここはコヴォマカ星?何だか随分真っ暗な空を飛んだ気がしたんだけど…。」

水を飲んで元気を取り戻したジャスミンはシャルロットを見て驚きを隠さなかった。先程までロケットで宇宙を飛んでいたはずなのに、見覚えのある人が目の前にいる。戸惑ってるジャスミンに対してシャルロットが説明した。

「うちもロケットでここに来たんだよ。ジャスミンを追ってきたら、この星に辿り着いて……。」
「ロッティもロケットに乗ってきたの!?それじゃあ、やっぱりわたし達、宇宙を飛んできたんだね!!」

ロケット操縦の成功、そして再会の喜びに浸るのも束の間、シャルロット達は自分達が辿り着いた星が風の星ではなさそうである事に落胆していた。挙句の果てに、2人が乗って来たロケットはどちらも壊れている。まさに宇宙で迷子になったのだった。

「それにしても、砂風が強すぎるね。これじゃあ何も見えないし、先に進めないよ…。」
「ねえ、ジャスミンの風の魔法で何とかならないかな?」
「わたしの魔法で?うーん……やってみる。」

ジャスミンは砂風がより強く吹いている所に立ち、呪文を唱えた。

「風よ…光まとい…空を舞う…カナリヤ色の風達よ…私の小さな吐息に集いて、大きな大きな力になれっ!」

すると、ジャスミンの周りに優しいそよ風が吹き始め、やがて大きな暴風へと変わっていった。砂風とは反対側に吹く風に押し返され、ようやく視界を遮った砂風が収まっていった。

「嵐は消えたのね!?」
「ジャスミン凄―い!!」
「てへへー。ロッティの光の魔法もきっとどこかで役に立つ筈よ!」

砂風が消えたことでようやく先に進められる。嵐で遮られた道を進もうとしたその時だった。
突然、地面が大きく揺れたのかと思えば、砂の中から巨大な存在が姿を現した。まるでムカデとアリジゴクを合わせたようなその生き物に、シャルロットとジャスミンは思わず悲鳴を上げた。

「きゃあ!!スターライト!!」

シャルロットが呪文を唱えると、真っ白で大きな星の光が化け物を襲った。マジックドールを使った魔法の練習を誰よりも懸命にやっただけの事はあって、頭より体が先に動いたのだった。

「うりゃあ!アトリ!!」

ジャスミンも風魔法を使って化け物に攻撃を与えた。幸いな事にその化け物は土属性、ジャスミンの風魔法が有利な状況だった。

「もう一度、スターライト!!」

もう一度呪文を唱え、先程よりも大きな光が化け物を襲い、魔法に攻撃を何度もくらった化け物は逃げるかのように土の中へ再び潜っていった。

「倒した!!うち等、勝った!!」

初めてマジックドール以外の相手との戦いに勝利し、シャルロットとジャスミンは感嘆の叫びを上げた。

「そう言えば、さっきのロッティって凄いパワー出てなかった!?あれが先生が言ってた星の加護の力じゃないの!?」

言われてみれば、先程使ったスターライトの魔法は今まで練習した時よりもはるかに強い魔力だった。コヴォマカではない別の星で魔法を使った事で初めて『宇宙での戦い方』を実感するのだった。

「それにしても、ここ誰もいないのかな?」
「人どころか生き物すら見当たらないね……。もうちょっと進んだら誰かいるのかな?」
「じゃあ、行ってみよう。近くに街があるかもしれないし。」
「オーッ!!」

何もない砂漠の中でただボーッとするわけには行かない。シャルロット達はどこか話が出来そうな人がいる事を望みながら化け物が遮っていた道を進んで行った。

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