マジバケ5つ星 | ナノ


目を開けると何故か見知らぬ場所に立っている。
辺り一面が真っ白で自分以外は何も存在しない、そんな広場を見回しているとそんなに遠くない方から見覚えのあるシルエットが目に浮かんだ。

「先生?」

宇宙に行くと言って姿を消したマドレーヌ。
その日から3ヶ月が経っても戻って来なかった担任の先生が自分の目の前で微笑んでいた。

「本当に、マドレーヌ先生なの?」

今の状況が信じられなくて思わず聞いてみたが、マドレーヌはただ微笑むばかりで返事をしなかった。
すると、マドレーヌが突然振り向き、そのまま自分から遠ざかって行った。

「待って!!先生!!行かないで!!」

遠くへと行ってしまうマドレーヌに向かって叫び、彼女の方へ走ろうとしていた。
だが、何故か体が動かない。
足が地面にくっついてるかのように身動きが取れず、その場に立ったまま、マドレーヌが立ち去るのを見ているしかなかった。

「行かないで!!戻って来て!!マドレーヌ先生!!」


「シャルロット!」

誰かの呼び声に、シャルロットは目を覚ました。どうやら、先程見たのはただの夢だったようだ。

「...ママ?」

心配そうに見つめる自分の母親を見て、シャルロットは思わずしがみついたまま泣き出した。
マドレーヌに会えない日が続く中、シャルロットは良くこうやって泣く事が多くなっていた。

「ママ...マドレーヌ先生に何かあったのかな?このまま、帰って来ないのかな?」

多少ぼんやりしてるとは言え、大好きな先生が未だに帰って来ない。
先生の身に何かがあったのではないかと言う不安と二度と会えなくなるかも知れない恐怖がシャルロットの心に満ちていた。

「うちに何か出来ること無いかな?マドレーヌ先生を助ける事出来ないのかな?」

すすり泣く娘の頭を撫でたまま何も喋らなかった母親は少し何かを考えてると、ようやく口を開けた。

「今のシャルロットには出来ないのかもしれない。」

その言葉を聞いて強い衝撃を受けた様な感覚を感じたシャルロットだったが、母親はさらに話を続けていた。

「でも、これからのシャルロットには出来るんじゃないかしら?」
「これからの...うち?」

一瞬何を言っているのか理解できず、シャルロットは不思議そうな表情で母親を見つめていた。

「例えば、そうね。前のシャルロットは言葉を話すどころか歩くことも出来なかった。でも、今はこうしてママと話せるし、1人で学校にも行ける。
勉強もそう。学校で初めて習った時は解らなかった物が、本を読んだり先生に聞いたりすることで解りやすくなる。
魔法も最初は使い方すら解らなかったのに、今ではマジックドールを使って実戦をする事が出来る。
これと同じ。今は先生を会いに行ける方法も、助ける方法も無いかも知れないけど、探してみればその方法が見つかるかもしれない。」
「それって、宇宙に行ける方法も、先生を助ける方法もどこかにあるって事?」
「そこまでは解らないけど、もしシャルロットがそう思ってるのなら、探してみるのも良いんじゃない?」

母親の言葉を聞き、シャルロットは泣くのを止め、学校へ行く準備をした。

「ママ、うち探してみる!マドレーヌ先生を助けるためにうちが出来る事、ほんの小さな事でも良いから探してみる!!」
「そう。でも、あんまり無理はしない事。ママはシャルロットがいつも元気でいる事が望みだから。」

母親に手を振りながら学校へと走っていくシャルロットをしばらく見つめ、娘の姿が消えるのを確認すると、母親は部屋にある額縁を手に取った。
そこにあったのは、かつて彼女が魔法学校の生徒だった頃、クラスメート達とマドレーヌと一緒に撮った写真だった。

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