マジバケ5つ星 | ナノ


ロケットの前でロボットの攻撃を受け視界が真っ暗になり、誰かに抱えられていた様な感覚を感じてからかなりの時間が経ったかのようだった。
目を開けて一番初めに見えたのは黒くて冷たい床、体を起こして辺りを見回すとそこには鋭い針が大量に並べられてる溝があり、さらに奥を見ると今まで見た物とは比べ物にならない程巨大なロボットが歩き回っていた。

「ヒッ!?!?」

巨大ロボットと目がばったり合い、シャルロットは思わず後退りをしてしまった。
自分を恐怖に満ちた目で見てるシャルロットを気にもせずロボットは再び部屋を歩き回り続けた。

「はっ!な、なにここ!?」

隣にある壁からジャスミンの声が聞こえた。どうやらジャスミンもこの変な場所に連れてこられた様だ。

「ジャスミン??ジャスミン聞こえる?」
「ロッティ?いたのねロッティ!!良かった。……って安心している場合じゃないわ。私達大ピンチみたい。どうしよう……。」

目の前には刺されたら命を持って行かれそうな針の溝。それを乗り越えたとしても巨大なロボットの目を避けながら逃げるのも困難だった。

「はい、今日は魔法の両面性について学びましょう。」

ふと、以前マドレーヌとの授業で聞いた何かを思い出した。

「先生、両面性って何ですか?」
「物には表と裏があるように、皆が使ってる魔法にも良いところや悪いところがあるの。
例えば、火の魔法は火を使って体を温める事が出来るけど強すぎる火は逆に命を奪うこともある。
水の魔法は雨で辺りを涼しくしたり、植物の成長を手伝ってくれたりするけど、多すぎる水は逆に人を溺れさせるし植物も腐らせる。この様に、同じ魔法でも使い方によっては良い結果にも悪い結果にもなるのよ。」
「光や闇にも両面性はあるんですか?」
「勿論。全てを明るく照らす光も強すぎると逆に目を眩ますし、暗いと言われて恐れてる闇も強い光を遮ってくれる影になってくれるの。光だから良くて闇だから悪いわけではなく、それ等がどの一面を持っているかが1番重要なことよ。」


光は辺りを明るくすると同時に視界を遮ることも出来る。それを思い出したシャルロットはロボットの注意を引こうと小さな光の粒を出した。
囚人の不穏な行為に気付いたロボットがさっきよりも早いスピードでその囚人の居るところへ近付き、やがて目の前に着くと小さかった光は突然大きな光へと変わり、ロボットの目を眩ませる。
何も見えない状態でも囚人の行為を止めようと動き回ると、一瞬だけ宙に浮かんだ様な感覚を感じそのまま針の溝の中へと落ちていった。

「ひぇっ!?!?何今の??まさか、ロボット達が戻ってきたとか?」

ロボットが落ちた時の衝撃音に驚いたジャスミンが不安そうに辺りを見回すなか、シャルロットは自分の前に落ちたロボット橋にして牢獄を脱出した。

「ジャスミーン!」
「ロッティ?もしかして、ロッティがやったの?」
「待ってて。今出して上げるから。」

ジャスミンに向かって手を振っていたシャルロットは近くにあった装置らしき物を見つけ、いくつかのボタンをいじってようやくジャスミンの所に橋を出す事が出来た。

「ロッティー!!」
「ジャスミン、無事で良かった~!!」

お互いの無事を確認し、牢獄から出ようとした時だった。突然地面が揺れ、大きな影が2人を覆っている。青ざめた顔で振り向いてみると、溝に落ちていたロボットいつの間にか目の前にいたのだった。
体が赤くなっていくそのロボットはどう見ても怒っている。

『きゃああああああああ!?!?!?』

今にも襲い掛かりそうなロボットを目の当たりにして大きな悲鳴を上げたシャルロット達は後ろを振り向くことなくただ走り続けた。足が痛くなるのも呼吸がし難くなるのも気にせず遠くへ走り、気がついた時はロボットは勿論建物も見当たらなかった。

「ぜぇ…ぜぇ……もう、追って、来ないよね?」
「た…多分……」

ロボットが見えてない事に安堵し息を整えていると、いつからいたのか岩の陰に隠れて自分達をじっと見つめてるモグラがいる事に気付いた。
お互い目が合っても逃げようともせず立っていて、しばらくするとほんの少し遠くへ離れて行き手を振っていた。

「…付いて来いって事?」

シャルロット達が近づくとモグラはまた遠くへ行き、そのモグラをまた2人が追う。これが続いているうちに着いたところは大きな穴があるところだった。
2人が穴の近くまで来た事を確認するとモグラは何のためらいもなくその穴の中へ飛び込んだ。

「ジャスミン、ちょっと手掴んでくれる?」
「オッケー、危ないからゆっくりね。」

片方はジャスミンの手を握り、片方は地面を支えながら、シャルロットは穴の中へそっと足を入れる。体の半分以上が穴の中に入ると、ジャスミンの手を掴んでた手も地面に付き、ようやく全身を穴の中に入れる事が出来た。
穴と地面の高低差はそんなに大きくはなく、普通に飛び降りても怪我には及びそうになかった。

「ジャスミン、降りていいよ。」
「本当に?嘘ついてない?」
「大丈夫、そんなに深くないから。」

シャルロットの言葉を聞き、ジャスミンも穴の中に入ってきた。穴の中は洞窟の様になっていて、そこには先ほど見たモグラが何体もいる。
モグラ達の視線を感じながら奥へ進むと、梯子の近くにいるモグラが他より目を輝かせて2人を見つめていた。

「どうも!あなた様方の噂は聞いております!ロボットの牢獄から脱獄したんですって?」
「そ、そうなんだけど……正直あんまりよく状況が分かってなかったりして……私達マドレーヌ先生を探すために風の星へ行かなきゃいけないのに……ここってどこなの?」
「勇者様、ここは土の星ヒカラビータです。我々トゲモグラの星です。」
「トゲモグラ?」

土の星、確かに砂漠に包まれた場所がそれを物語っている。そして、こうして話しているモグラの様な姿をした種族はトゲモグラ、土の星の住人であるらしい。

「私達の国には伝説があるのです!我々トゲモグラがすべてのミミズを取り尽くした時、宇宙から勇者がやってきて我々をミミズの楽園へと導くのです。」

ミミズを主食としているのか話を切り出したトゲモグラは涎を垂らしている。

「ハッ!?し、失礼しました……つい涎が……」
「私達がその勇者様なの?」
「その通り!ですよね?」

キラキラとした瞳で首を傾げられても何と答えればよいのか解らない。シャルロットとジャスミンは複雑そうな顔でお互いを見つめあった。

「さあ!王様に会って行ってください!王様も勇者様が現れるのを待っておられました。」

そう言って梯子を登っていくよう催促されたシャルロット達はトゲモグラ達の王様と呼ばれる人に会いに行かざるを得なくなった。

 
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