禅部屋を出ると、授業はとっくに終わっているのに未だに帰ってない生徒が多かった。彼等の話によると、ピスタチオ先生による居残りのために学校にいるらしい。
そんな生徒達を通りすぎながらロケットがありそうな場所を探してると、近くで見覚えのある人が生徒と話をしているのが見えた。
「トリュフ先生!!」
先生の名を呼ぶなり走って来るシャルロットを見てやや驚いた表情をしつつも彼女を制した。
「廊下は走らない。」
「ご、ごめんなさい…。あの、先生。変に聞こえるかも知れませんが、その……」
言うか言うまいか躊躇うシャルロットは、しばらくすると手を握りしめ、大きな声で叫び出した。
「この学校に、ロケットって本当にあるんですか?」
「アアアアア!!ロッティイイイ!?!?」
シャルロットの爆弾宣言のような質問にカフェラテは頭を抱え込み、先生であるトリュフはシャルロットをただじっと見ていた。
「これはまた、凄いことを聞いてきたね。」
「えと、その……無いのなら無いって言っても良いんです!でも、せめてマドレーヌ先生がどこにいるのか、先生に何かあったのか教えてください!!」
「マドレーヌ先生なら長期の休暇を取った、と言ったと思うが?」
「でも、ここ何日連絡もなかったと聞きますし、先生の身に何かあったんじゃないかと思うと怖くて……本当にロケットがあるなら先生を探しに行けるんじゃないかと思って。
だから、その、もし本当にあるならどこにあるのか教えてください!!お願いします!!」
頭を下げてお願いするシャルロット、その後ろで震えているカフェラテ、2人をしばらく見ていたトリュフはようやくシャルロットに声をかけた。
「申し訳ないが、先生として生徒に危険が及ぼすかもしれない事は話すことが出来ない。
だが、そうだなぁ。先生の出すクイズに答えられたら話してあげられなくはない。」
少なからずの希望がありそうな言葉にシャルロットは顔を上げた。そんなシャルロットの頭をそっと撫でると、トリュフはいたずらっぽく笑い、クイズの問題を出した。
「木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中、なら物を隠すならどこか?さて、答えは何かな?」
問題を聞いたシャルロットはしばらくしてハッとしたような顔になると、トリュフに礼をし、カフェラテと一緒にどこかへと走っていった。
「何余計な事してるんだ!?」
いつから居たのか、トリュフの後ろには彼を険しい目で睨んでいるノアゼットが居た。
「生徒を危険に晒すような事して、それでも教師か!?」
「ただ勉強を教える事だけが教師の仕事ではない。時には、前へ進もうとする生徒にちょっとした道案内をする事だって必要だ。」
「けど、そんなの…」
「さっきから危険だと言ってるが、それはその道を進もうとする本人が決める事だ。」
「父さん!?!?」
これ以上になく声を荒くするノアゼットをしばらく見つめると、トリュフは彼の生徒であって息子であるノアゼットに近づいた。
「お前が問題事に巻き込まれたくない性格なのは解るが、そうやってずっと避けてばかりいると、いずれその状況に立ち向かえなければならない時に何も出来なくなるぞ。」
父親として、そして先生としての忠告をしたトリュフはそのまま職員室へと行き、残されたノアゼットは唇を噛んだままその場に立っていた。
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