「それでね〜。キルシュにハープ上手だって褒められたの~!」
「本当!?良かったね、アランシア!!」
「うん〜!」
ウィル・オ・ウィスプの寮でキャンディとアランシアがきゃあきゃあと話をしていた。
女子はよく一緒に話すからそんなに珍しい光景ではないだろう。
だが、それは1人の少女には少し面倒な事だった。
「ちょっと!話ばっかしないで手伝ってよ!!」
寮に来たばかりでまだ荷物を片付けているミエルが2人に叫んだ。
手伝いに来たと言って何にもしない2人を見て苛ついたのだろう。
「ミエルも少し休みなよ。」
「そうだよ~.無理すると倒れちゃうよ~。」
「そう言って全然進んでな….」
話を終えるも前に2人に腕を引っ張られ、いきなりベッドに倒れた勢いのせいで
そこにあったいくつかのぬいぐるみが宙に浮かんだ。
「それにしてもミエルの寮ってぬいぐるみが多いよね~.お子ちゃまの部屋みた~い。」
「お子ちゃまじゃない!!」
「あっ!このうさぎのぬいぐるみ可愛い!!」
「あー!!勝手にいじらないで!!」
些細な事でムッとなったりぬいぐるみを返してもらったり、今のミエルには2人が助っ人より侵入者に見えた。
「いいなぁ。私もこのぬいぐるみ欲しい〜。」
「ねぇねぇ、これ1つ頂戴。」
「ダメぇええ!!!」
自分のぬいぐるみを人にあげる。ぬいぐるみに目が無いミエルにはあり得ない話だった。
それにしても手伝いに来たと言いながらさっきから邪魔ばかりしている。親友じゃなかったらとっくに追い出していたかも知れない。
「でも残念〜。私と同じ寮になると思ってたのに…。」
「仕方無いよ。校長先生がもう決めてたんだから。」
「それにもし同じ寮になったら〜キャンディの場所にもぬいぐるみが置かれるよ〜.」
「いいじゃない、可愛いいし!」
2人1部屋になろうが1人1部屋になろうが今のミエルにはどうでも良かった。
今の彼女が望むのは早く荷物を片付けるだけだった。
「もうやろうよ。だいぶ休んだでしょ?」
「は〜い。」
「もう、せっかちなんだから〜。」
それから約30分、荷物はほぼ全部片付けられ、キャンディとアランシアも帰って行った。
「疲れた…。」
「お疲れ様ぐり〜。」
「寝るなら電気を消すビカー。」
疲れが溜まった身体をベッドに乗せ、ミエルはそのまま動かなくなってしまった。
「オイラが消すでガス。」
ガルが電気を消そうとスイッチのある方へ飛んで行った時だった。
「あれ?エアのぬいぐるみが無いなの。」
「え?」
「あ〜私のも〜。」
エアとハミングの言葉を聞いて周りを見てみると、確かに2人のぬいぐるみが無くなっている。
ふと、ある事が頭に浮かんだ。片付けが終わり、寮から出て行く2人の少女。その2人の腕に抱かれている2つのぬいぐるみ。
「!!!」
さっきまで動かなかったのが嘘のようなスピードでミエルは寮から出て行った。
「キャンディぃい!!アランシアぁあ!!」
ミエルの叫び声が本人達に聞こえたか、精霊たちは知る由もなかった。
END
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