マジバケ短編 | ナノ


キルシュ視点/不愛想な少年の意外な一面

「トリュフー、サッカーしようぜ。」
「はぁ?こんな時間にか?」
「いいだろう?どうせお前も寮でやる事ないだろうし、テストも終わったんだからパーッと盛り上がろうぜ!!」

全部のテストを終えた日の放課後、俺は親友のトリュフをサッカーに誘ってみた。
まあ、こいつ無口で常に面倒くさがり屋な所はあるけど、俺の勉強見てくれたり、暇な時遊んだり、時には相談に乗ったりと結構いい奴なんだ。

「まさかこの2人でやるのか?他のメンバーも無しで?」
「だって他の奴等全員乗り気じゃないし、セサミは何か用事があるって言うからよ。」
「はぁ…。そんなんでよくサッカーしようなんて言えたもんだな。」
「いいじゃねぇか。普通にボール蹴りながら走ればそれで良いって!!」

今でも面倒くさそうにしてるトリュフを俺は必死で説得してみた。
まあ、無理矢理誘ってるみたいで悪い気はするが、やっとテストも終わったのに何もしないで一日過ごすなんて俺の性に合わないからな。

「……じゃあ、こうするか。」
「おお!!やる気になったのか?」
「ああ、ただし、条件がある。」

条件?トリュフがこう言った事に条件を出すのは珍しいけど、まあ、やってくれるって言うし何でもいっか。

…と思った俺を殴りたかった。

「何でPKなんだよ!?」
「もう直暗くなるし、早めに終えた方がいいだろう?走りすぎて無駄に体力削りたくもないしな。」

トリュフの言う条件はこうだった。サッカー…とは言っても交代しながらPKをして、先に5点取った奴が勝ち。そして、負けた奴は買った奴に何か奢る。
まさにトリュフらしい条件だったが、サッカーくらい普通に楽しくやって欲しかった。

「ああ、ちなみにキーパーは魔法で止めるなりなんなりしても構わないからな。」
「そんなのお前が有利になるだけじゃねぇか!?俺の魔法で止めたらボールが焦げ焦げになるだけだろう!!」
「んな事言ったら俺の魔法だってボールを銀河に吹っ飛ばすだけになるぞ。」
「……。」

何かすんげぇとんでもない事を口にしたトリュフに俺はどうリアクションをとればいいのかわからなかった。
冗談…と言えば冗談にも聞こえなくはないが…。

「じゃあ俺から行くぞ!!」
「おう!!来いよ!!全部止めてやる!!」

ボールから少し離れたトリュフがスピードを上げてボールに近づき、足がボールを蹴ろうとしていた時、俺は素早く体勢に入った……が…

「おい、トリュフ!?!?」
「アッハハハハ!!引っかかった!!アッハハハハハ!!」

ボールを蹴る振りだけだったと知り気が抜けた俺を見てトリュフは今までのトリュフとは思えない程大げさな笑顔で爆笑していた。

「なぁ。ちゃんとやってくれよ。」
「悪い悪い。じゃあ、本当に行くぞ!!」

そう言ってトリュフは今度は本当にボールをゴールのとこへ蹴り、それを止めようとした時だった。

「あ、やべ…。」
「えええ……。」

先程トリュフが言った『銀河に吹っ飛ばしてしまう』と言う言葉を思わず信じてしまいそうな位高く飛んでいき、俺達はただ遠くへと飛んでいくボールをぼんやりと眺めるしかなかった。

そんなこんなでPKをやってる内に互いの点数は4:2で俺が後一点を入れれば勝ちだった。
正直PKでここまで長引くとは思わなかったが、それよりも前に、トリュフのボールの蹴り方があまりにも酷過ぎる事に俺は驚いた。
蹴るポーズはそれっぽいのにボールが凄く遅いとか、ギリギリを狙ってゴールを決めるのかと思ったらどんどん端っこへとボールが飛んでいくだけだったとか、
ちゃんと正面に向かって蹴ったはずなのに何故か後ろへ飛んでいくとか…。
もしかしなくても、トリュフは絶対運動音痴だ…。

「おーし!!絶対最後決めてやる!!後でアイス奢れよ!!」
「まだ決まってもないのに奢れとか気が早すぎるんじゃないのか??」

いや、正直お前にはもう負ける気がしない…。そして、最後の力を振り絞って俺はボールを蹴った。

「なっ!?」
「!?!?」

ボールが飛んで行ったのはちょうどトリュフの目の前。いや、問題はそれじゃなかった。
かなりのスピードで飛んで行ったボールがトリュフの顔に直撃し、そのボールを抱えたままトリュフは何回かひっくり返ってしまった。

「おい、大丈夫か!?」

あまりの出来事に俺はトリュフへと走っていった。が、トリュフの反応はと言うと…

「止めたぁ----!!!止めたぞ!!!」

と、かなり嬉しそうに叫びながらボールを抱えて走って行ったのだった。
まるでセレモニーでもやってるかの様に走り続けるトリュフを、俺はただあっけなく見つめるしかなかった。

結局試合は俺の勝ち。トリュフが奢ったアイスを食いながら俺達はそれぞれの帰る場所へと足を運んだ。
勝てたのも嬉しいが、爆笑する所やスポーツが苦手な所など、トリュフの意外な一面が見れたことに、俺は思わず笑いが止まらなかった。
その次の日のトリュフは相変わらずの不愛想だったが、昼休みのドッジボールでボールをかわせただけで凄い大声で笑いながら走り回る等、相変わらずの運動音痴らしさを見せていたのは、もう少し後の話だった。

前 次
(1/1)
戻る
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -