マジバケ短編 | ナノ


カシス視点/小さな誤解が招いた大惨事

今日はなんとなく勉強したくない気分だったから、途中で抜け出し、今は外で日向ぼっこをしている。
天気もいいし、昼寝でもするか。と、思って目を瞑った時だった。

「何やってるの?」

聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。
誰かと思えば、あの馬鹿でかい帽子、肩の着くところに巻かれたクルクルパーマ、クラスメートのミエルではないか。

「なーんだ。お前もサボりか?」
「何言ってるの?私達は野外授業なの。」

ああ、そうだった。こいつ、俺と授業が違うんだっけ。まあ、こいつが授業をサボること自体あり得ないか。

「そう言ってるって事は、カッシーはサボってるのね。」
「いいだろ別に。たまにはこうして休みたくなんだよ。」
「たまにはって…ほとんど毎日サボるくせに。」

あーあ。また始まったよ。真面目すぎるのはペシュそっくりだな。2人で説教とかされたらたまんないだろうなぁ。

「にしても、お前最近俺とよく話せるようになったな。」
「前からずっとこうでしょ?」
「いやいや、最初に会ったときはそりゃもう酷かったぜ。」

そうそう。最初にこいつと会った時は冷や冷やしたぜ。あんな怖ぇー奴に会うのは、きっとあれ以来無いだろうな。


時はウィルオウィスプでの冬が終わりを告げようとした頃。その日、俺達はマドレーヌ先生と一緒に裏庭へと向かった。

「はーい!じゃあ、終わったらここに集合ねぇ。」

裏庭で俺達は2人一組になって、庭にいる生き物を一匹観察する事になった。
生き物と言っても、カエルグミやミミズグミしかいないんじゃないか?
とは言え、俺は誰と一緒に行けばいいんだ? チーム分けをしたみたいだけど、俺その時いなかったからなぁ。

「あ、カシス。あなた、サボったから知らないでしょ?カシスは、この子と一緒にやってねぇ。」

とマドレーヌ先生が言ってたが、隣には誰もいない。
まさか幽霊と一緒にやれってか?と思ったら、後ろに何やらピンク色のローブが見えた。
よく見れば物凄く小さい女の子が先生の後ろに隠れていた。こんな奴いたっけ?つーか何ワナワナと震えてんだ?

「この子、ミエルって言ってね。今日転校して来たのよ。」
「はぁ……ってちょっと待て!!そいつと一緒にやれってのか!?」
「あらぁ、いいじゃなーい。ミエルはまだ解らない事があるんだから、最年長のあなたが教えてあげればいいでしょ?」
「いや、待てよ!!じゃあレモンとか、アランシアと一緒にやらせばいいだろう!何で俺なんだよ!?」
「だってぇ〜、この子、あなたとはまだ会ってなかったから…嫌?」
「嫌って……」

別に嫌な訳じゃないけど、俺こうゆう奴はあまり好きじゃないんだよなぁ。
何か見るからにして子供っぽいし。しかもこいつ、いきなりウーウー言いながら泣き出しちゃったよ。

「一緒にいて仲良くなるのもいい事よぉ。じゃあ、よろしくねぇ。」
「いや、ちょっと…」

何か言おうとしたけど、先生はそのミエルという奴を置いてぷらぷらと何処かへ行ってしまった。
それからと言うと、全然話が出来ねぇ。こいつ、顔真っ青になってるし。

「…なぁ。」
「!?!?」

気まずいと思って声でも掛けようとしたら、バネみたいに飛び上がって近くの木に隠れた。ただ声掛けただけなのに。
そしたら、今度は泣きながらポケットをいじっている。何がしたいんだ、いったい?
そんな事を思ったら、そいつはポケットから出したらしき物をじっと見てると、俺の所に恐る恐る近づいた。

「え…えと…ストラップ…好き?」

何を言い出すのかと思えば、兎のぬいぐるみのストラップを握り締めたまま、ストラップ好きなのかって聞いてる。

「…別に。」
「……!!」

おいおい、今度は頭抱えたまま蹲ってるよ。俺、何か変な事言ったのか?
つーか、何で先生はこんな奴と一緒にチーム組めと言ったんだ?さっさと済ませて早く帰るか?
しばらく歩いてると、ようやく生き物らしき物が出てきた。まあ、やっぱりカエルグミとミミズグミだけだったけど。

「おーい、ここで観察する……ぞ?」

やっと観察が出来ると思って、一緒に来た奴を呼んだが、何故か何処にもいない。
何処に行ったのかと思いながら辺りを見回すと、とんでもない光景が目に映った。
そこにいたのは勿論ミエル。だけど、今にも折れそうな木の枝にぶら下がっているではないか!?
目の前に鳥の巣があるのを見ると、恐らくそれを観察しようとしてるみたいだが、これは流石にまずい!

「おい!!待ってろ!!今行くからな!!」
「!?!?」

落ちる前に連れ戻さなきゃ。あいつのいる木に向かって走っていくと、何故か顔が真っ青になったまま俺を見つめていた。

「きゃああ!!!来ないでぇ!!!」
「はぁ!?何言ってるんだよ!?そこにいたら落ちるぞ!!」
「いやだぁ!!来ないでぇ!!」

来るなといいながら枝にしがみついている。じゃあ、俺にどうしろと言うんだ?
と思っていると、枝が急にバキバキと音を出し、やがて…

「きゃあああ!!!」

枝は本当に折れてしまい、ミエルは鳥の巣を抱えたまま落っこちた。
最悪なのは、そいつは今ちょうど俺の上にいる事だった。そして、

前 
(1/3)
戻る
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -