マジバケ短編 | ナノ


オリーブ視点/少年が思う少女

動物達を見に森に行こうとした時、予想外の人を見掛けた。
普段なら他の人と一緒にいる事が多く、特にキルシュやピスタチオ等の人達に勉強を教えるトリュフが、大きな木の下に1人座っていた。
彼の手には小さな紙があった。テープが貼られてるのを見ると、以前カベルネが悪戯で取りあげた写真なのかもしれない。

突然、何かが見えて来た。未だに慣れない、いや、もはや慣れたくもない他人の心だった。
見えた物は小さかった頃の彼と、彼と同じ年位の女の子が、夜遅くにたった2人で遊んでいる事だった。

「何そこにボーッと立ってんだ?」

突然、彼に声を掛けられたみたいで、私は凄く驚いた。彼を見ると、冷たい目が私を見ている。

「何か用か?それとも、お馴染みの心でも読んでるのか?」

冷たい声でトリュフにそう聞かれた。
彼は私が心を読める事を知っていて、その事で彼は私を嫌っている。
誰にだって他人に知られたくない事があって、それを知られる事がその人にとって羞恥である事を私は知ってる。
けど、望んでもないのに心が見えてしまう。だから、私は他人と付き合うのが怖かった。

「用が無いならあっち行ってくれないか?目障りだ。」
「あ、うん。……ごめんね、邪魔しちゃって。」
「……フン。」

トリュフの居る所から去ろうとした時だった。
突然、風が強く吹いて来て、トリュフが持っていた写真を飛ばしてしまった。
その写真は私の所に飛んで来た。そこにあったのは、先程見えた2人の姿だった。

「返せ!!」

鋭い声で怒鳴りながらトリュフは私が持っていた写真を取り上げた。
怒り、悲しみ、憎しみが篭った目で、彼は私を睨んでいた。

すると、また彼の心が見えてしまった。
写真にあった女の子が、大きな男性に抱かれたまま遠くに行ってしまい、それ以来、その子は二度とトリュフに姿を表さなくなった。
その子が誰なのかは知らないけど、その時以来、トリュフはずっと彼女を思ってたのかもしれない。
いつか、彼女が彼の所に戻って来る事を信じながら。

「ご、ごめん……別に、見るつもりは……」
「帰れ。」

彼の心を覗くつもりも、写真を見るつもりも無かった。
けど、彼の心を見てしまった。きっと、今の彼は私と話もしたくないだろう。

「本当に……ごめんね…。」

私はただ、彼に謝るしかなかった。

数分後、教室に戻って来た私達はその時も何も喋らなかった。
彼の心には今もあの女の子がいて、2人で遊ぶ姿が時々見えていた。
私はいつかその子が彼に来る事を願った。願う事しか出来なかったのかもしれない。

それから数年後、トリュフが突然休学し、彼の心の中にいた女の子とそっくりな子が転校した時、私は少なからず驚いた。

END

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テーマ「人外ファンタジー」
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