千年の出会い小説 | ナノ


買い物が終わった時はすでに夕暮れになり、街の人達も少なくなっていた。

「ああ……疲れた…。」
「大丈夫?」
「なぁに。これ位何とも無いさ。」
「ほぉ?もう少しお仕置きが必要と?」
「待て待て!!頼むから勘弁してくれ!!」

怖い笑みを浮かべてるルークを見てロランスは手をブンブンと振りながら哀願した。
幸い、ルークも別に本気ではなかった様だ。

「今から行けば、着いた時は暗くなってるだろうな。」
「また歩かなきゃいけないのかぁ…。」
「……。」

あの長い道をまた歩かなければならない。
何度もこの辺に来た事があるルークとロランスは別に問題はないが、歩くのに慣れてないフウカには気の遠くなる事だった。

「フウカ、大丈夫か?」
「うん。だいじょ…あっ。」

平気だと言って歩こうとした途端、フウカは足の力が抜けたかのように倒れた。
ルークが支えていなかったら、地面の上に横になってただろう。

「ヒョロヒョロだねぇ。それじゃあ一日経っても帰れないよ。」
「……。」

ロランスの正論にフウカは何も言えなかった。
足手纏いになったと感じたフウカの視野が少しずつ滲んで行った。

「ロランス、頼むぞ。」
「あいよー。俺も歩くのは面倒臭かったしな。」

そう言うと、ロランスは何故か遠くへと歩いて行き、やがて点の様にしか見えなくなる程遠くまで行くと、物凄い勢いで走って行った。
すると、ロランスの身が火の様に赤くなり、その姿は大きな鳥のようになった。
その鳥はルークとフウカを連れ、一本の道を辿りながら飛んで行くのだった。

しばらく飛んでいくと、学校が見えてきて、2人を乗せた鳥はゆっくりその場へと降りていった。
そして、2人が地面に着くと、その鳥は再びロランスの姿へとなった。

「とうちゃーく。」
「……今の…。」

フウカは先程の出来事が信じられなかったのか、目を見開いたままロランスを見ていた。

「ロランスは、不死鳥なんだ。さっき見た鳥が、あいつの本当の姿だ。」
「そうそう。こう見えても500年は生きてきたぜ。」
「500年…。」

今まで自分と同じ人だと思ったロランスが実は不死鳥だった。そんな事を知った途端、フウカは言葉を失った。

「そんな顔すんなよ。トトだって人じゃないんだし、人じゃない生き物が一緒にいる事で驚くことはないだろう?」
「まだ慣れてないだけだ。いずれフウカも解るようになるだろう。」
「……。」
「まあ、用は全部済んだし、戻るか?」

ロランスは寮へと走り、ルークもフウカを連れて寮へ戻って行った。
戻る間、フウカは前の世界に帰りたいと言う思いが頭から離れなかった。


その日の夜、フウカはベランダに座ったまま空を眺めていた。
青い月が輝く星空は、今まで見てきた空とは明らかに違う雰囲気を出していた。
空を見ながら、フウカは前の世界を頭に思い浮かべていた。学校の生活や家族との生活等を。
だが、可笑しな事に考えれば考えるほど、不幸な記憶ばかり思い浮かんでいた。
前に居た世界の自分は友達は少なく、一緒にどこかに遊びに行ったことも無い。自分から誘っても、誰も応じない。
虐められても誰も助けず、むしろ虐める人が増えていく。
家族とご飯を食べる時も、会話にまともに入れない。話をしようとすると、何故か会話が止まってしまう。
ふとフウカは思った。果たして、前の世界で自分の事を思ってる人がいるのだろうか?
自分が居なくなって、心配したり、悲しんだりする人がいるのだろうかと。

「フウカ?」

突然声を掛けられフウカは一瞬ビクリとした。
振り向けば、フウカをこの世界へ連れて来て、ずっと傍にいたルークが心配そうな目でフウカを見ていた。

「眠れないのか?」
「……うん。どうしても、考えちゃって。あの世界の事。」
「……。」
「もう、戻れないんだよね。ずっと、ここで暮らさなきゃいけないんだよね。」
「……寂しいか?」
「…んーん。そんな事……ッ」

言葉を最後まで言えず、フウカの目から涙が溢れた。ルークはそんなフウカを抱きしめ、ただ髪を優しく撫でていた。
すると、フウカの頭にある光景が浮かんだ。こことは違う別の場所で、同じように彼に抱かれている自分が。
フウカはルークの胸に潜り込んだまま、彼女とルークにしか聞こえない小さな声で泣き出した。

「……解らない。もう何が何なのか解んない……」

頭が真っ白になったフウカはもはや泣き止みそうになかった。
そんなか弱い少女を、ルークが、青い星空がただ見守っていた。

to be continued……


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