3人が辿り着いた街は『アネサ街』と言って、ロランスが言ってたように賑やかな所だった。
たくさんの人達がお店で何かを買ったり、何人かの子供達がかけっこをしていたり、時には馬車や馬に乗ってる人が道を通ったりしていた。
「あ、あそこ行かねぇか?あそこのお菓子、めっちゃくちゃうめぇんだ。
この辺では見かけない珍しいお菓子とかもいっぱいあるんだぜ。」
「それはまた今度にしろ。俺達、そんなにお金持ってる訳じゃないんだ。」
「ちぇっ、ケチな奴。」
あっさりと断られて拗ねたロランスをよそに、ルークはフウカを連れて街のあちこちを見回していた。
ロランスはと言うと2人が行く方向とは反対の方へと行ってしまった。
「確か…この辺に。」
「あの……」
「ん?」
「彼、置いて行っていいの?」
「まあいいだろう。あいつも子供じゃないんだ。それにこの街については俺よりあいつの方がよく知ってる。」
「…そう。」
小さくなっていくロランスを見つめるフウカの手を引き、ルークはある店へと向かった。ヨーロッパのコッテージの様な小さい店だった。
「わぁ…。」
木造になっている部屋にはたくさんの品物が置かれ、壁には蝋燭の火がゆらゆらと揺れている。
温和な雰囲気を出しているその店にフウカはしばらくその場に立ったまま動かなかった。
「いらっしゃい。何か探しかな?」
「え?え…と。」
「ここに書いてる物を探してるんだ。あるか?」
「あ、はい。ありますよ〜。」
若い女性の案内を受けながらルークが探し物のある所に行く間、フウカは店の中を歩きながら見回していた。
すると、とある人とぶつかってしまい、もう少しで転びそうになった。
「ちょっと、何処に目付けてるの!!」
「ご、ごめんなさい!」
フウカはぶつかってしまった女性に謝った。だが、その女性は未だに不満げな顔をしてる。
「ぶつかっておいてそれだけ!?」
「本当にごめんなさい…。」
「まったく、これだから子供は嫌なのよ。」
「……。」
不満を言い続ける女性。だが、そんな女性もどっちかと言うと子供に見えた。
顔立ちはフウカより少し年上には見えるが、短い茶色の髪から独特な赤い衣装はとても大人の様には見えなかった。
「どうかしたのか?」
「あ……」
「……。」
紙袋を何個か手に持っているルークがフウカの所に来ると、さっきまで不満を語っていた女性も大人しくなった。
「ルーク…くん。」
「はぁ。お前か?お前のそのすぐ切れるの、どうにかならないのか?」
呆れそうに語るルークにその女性は何も答えなかった。話してるのを見ると、2人は知り合いのようだ。
「わ…私、別に切れたわけじゃ…。」
「フウカだって、悪気があった訳じゃないんだ。もうその位でいいだろう。」
「……。」
女性は何も言わず、ただ下を向いていた。小さく唇を噛んでいるその姿は実に悔やんでる様だった。
「…解ったわよ。今回は見逃してあげるわよ。」
「……。」
「でも、次は本気で怒るからね。」
そう言ってその女性は店から出て行った。
「気にするな。あいつも別に悪い奴じゃないんだ。すぐ怒り出すのが玉に傷なんだが。」
「…あの人…」
「あいつはエルゼ。あいつも俺達と同じクラスなんだ。いずれまた会えるさ。」
ルークの話を聞くと、フウカはエルゼと言った女性が出て行った方を見つめた。
初めて会ってあんな風だったのに、次に会った時には大丈夫なのだろうかと、そんな思いが心を襲った。
「もう行くか。あいつを連れて、戻らなきゃな。」
「……うん。」
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