千年の出会い小説 | ナノ


「出せよ、オスカー!」
「今日一日だけだ。そこで大人しくしてろ。」
「今すぐ出せよ!!」

昼間の事件が先生に知られ、ロランスはオスカーが作った水玉の中で反省会をしなければならなかった。
その中で魔法を放っても火が水に消されるだけなので、壊す事も出来ない。
要するに、オスカーが解いてあげるまでずっとその中に居なければならないという事だ。

「諦めろ。オスカーは一度決めれば簡単に考えを変えない。それに、ゼウと一緒じゃないだけましだろ?」
「こんな居心地悪ぃとこにいる位なら一緒に居る方がマシだ!!」

内側から水の壁を叩き、水玉がブルンブルンと揺れている。

「やめろ。水が飛び散る。」
「だから出してくれよぉ!」
「つべこべ言うな。それとも、ここから窓の外へ放り出してやろうか?」

その言葉にロランスは急に大人しくなった。
ルーク達の部屋は4階。投げ飛ばされる時、もしオスカーが魔法を消せば、怪我の程度では済まないだろう。

「でもまさか、あのマルク先生に気に入られるとは、相当凄い魔法だった様だな。
あんな魔法、今まで見た事も無かった。」
「おかげでこっちは恥かかなきゃいけなかったけどな。」
「……ごめんなさい。」
「あああ、別にフーちゃんが悪いって言ってる訳じゃあ……」
「だが、これからの授業に付いて行けるかどうかは本人次第だ。このセイラディウス学院は、魔法学校の第一と言われてる。
入学するだけでも誇り高い事だと言われてるし、難しい授業に付いて行けず、途中で辞めた生徒も何人かいた。」
「……。」
「そもそも、本来ならお前はこの学院に入れなかった。
俺達が今17歳で2年生だ。要するに、お前は来年からこの学院に通える筈だった。」

フウカは今15歳。ルーク達が通う学院から学ぶ基本の知識さえ学んでいない。
そんなフウカが、今日たまたま凄い魔法を使っただけの理由で2年生の授業を受けなければいけなくなってしまった。
帰る事も出来ず、挙句に変な事まで学ぶ事になった。今のフウカはまさに袋の中のネズミだった。

「俺が何とかする。」

途方に暮れたフウカを元気付けようとしたのか、ルークがフウカを後ろから抱きながら語った。

「授業に付いて来れなくなった時、俺が出来る限り教える。魔法も、今はまだ不安定だが、いつかちゃんと使える様にさせる。」
「……。」
「…まあ、せいぜい赤点は取らない事だ。」

そう言い、オスカーは寮から出て行こうとし、しばらくしてまた立ち止まった。

「ああ、そうだ。お前、集団旅行はどうする?」
「集団……旅行?」
「行かない方がいいんじゃねぇかぁ〜?あんなぼん古い遺跡に行く位ならここで寝た方が……」
「フウカも行く。」
「はぁ!?」
「………。」
「長い間あの世界に居たんだ。この世界の事を思い出すためにも、色々な所に行った方がいい。」

ルークに抱かれてるフウカは目を伏せた。

「一応、先生には話して置く。連れて行けるかどうかは、俺にも解らないが。」

そう言ってオスカーは寮から出て行った。ロランスを閉じ込めた水玉の魔法を解かずに。

「もう寝るか。フウカはあそこで寝ればいい。」
「ああ!俺のベッド!!」
「いいだろ、今日くらい?明日になればちゃんと出られるんだし。」
「だからって人のベッドで寝かせないでくれよぉ!なぁ、ルーク!!」

フウカをロランスのベッドに寝かせたルークは寮の電気を消し、ロランスの叫び声だけが、1日中寮に響いていた。

to be continued ……<


 次
(5/5)
戻る
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -