千年の出会い小説 | ナノ


長い間走り続け着いた所は、様々な色をした花がある庭だった。
そこで小さく流れている川にしゃがみ込み、フウカは自分も聞こえない位小さな声で泣き出した。
フウカの目から出て来る涙一粒一粒が、川の上でポタポタと音を奏でている。

すると、水の一部が動き出し、羽を生やした1人の少女のような形となった。
目の前で起きてる不思議な出来事に、フウカは思わず体をビクリとさせた。

「安心しな。そいつは人に危害を及ぼす奴じゃない。」

後ろから声がして振り向けば、寮で会った青と黒が混ざった髪の男の子、オスカーが木の枝の上に立っていた。

「そいつはアクィール。水の精霊だ。お前が泣いてるのを見て気になってたようだ。」

オスカーが木から降りると、アクィールと呼ばれたその精霊は男の子の所へ飛んで行った。

「お前、ルークが連れて来た娘だろう?」
「え…どうして、それを?」
「ルークからお前の事は聞いている。お前が何処から来たのかもな。」

オスカーの言葉を聞いてフウカは顔が真っ青になった。
自分が別の世界から来た事を他の人に知られてた。フウカにとってそれはとても深刻な問題だった。

「安心しな。別にばらすつもりは無い。最も、言ったって信じる人なんて居ないだろう。」

その言葉を聞いてフウカは安堵の息を吐いた。

「それはそうと、お前さっき凄い魔法を使ってたな。」
「……あれは、あの人が…私が…魔法を使えるようにしたから…」
「いくら魔法使いでも、人を操る事は出来ない。魔法が使えない者に魔法を使わせるのは特にそうだ。
あの魔法は、お前が自ら使ったんだ。」
「…私が……魔法を…」
「もしかしたら…あいつが言ってたように、お前はこの世界の住人だったのかも知れないな。」

オスカーはフウカの目をじっと見ていた。彼の鋭いエメラルドグリーンの瞳は、まるでフウカのすべてを見通してるようだった。

「フウカ。」

聞き覚えのある声がフウカの耳元に響き、フウカはオスカーの後ろに隠れた。
声の持ち主は何を隠そうルークだった。少し荒く息をしているのを見ると、フウカを探しにあちこち走り回ってたようだ。

「ここにいるぞ、バカ女なら。」
「ばっ!?」

自分の居場所を教えられ、挙句にバカ女と呼ばれたフウカはその場で固まってしまった。
そんな事も気にせず、ルークはフウカの元へ近づいてきた。

「…フウカ。」
「!?来ないでッ!!」

鋭く睨みつけるフウカを見つめ、ルークは突然その場で土下座をした。

「すまなかった。」
「……え?」
「全部、俺が悪かった。戻って来たとは言え、慣れない場所に来て戸惑ってた筈なのに、
俺が好き勝手に物事を決めて、フウカの事は少しも考えなかった。」
「………。」
「もう、お前を苦しめたりしない。お前を泣かせるような事は絶対しない。本当にすまなかった。」
「………。」

自分に頭を下げているルークを見て、今までフウカを支配していた警戒心が少しずつ無くなっていった。
フウカは、まだ頭を上げないルークへ近づき、彼の顔を覗き込んだ。
今まで自分の事だけ考えてると思っていた彼の表情には、悲しみと共に罪悪感も含まれている。
目の前にフウカがいる事に気付いたルークは、フウカをよりキツく抱き締めた。
フウカの耳元で何度も謝りながら。


 
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