「止めてぇ!!」
女の子の叫び声が響くと同時に、竜巻の間に大きくて白い壁が表れた。
その壁は2つの竜巻を跳ね返し、ロランスとゼウデスは自分が放った竜巻に飛ばされた。
「何だ今の!?」
「すげぇ!一瞬で跳ね返しちゃったよ。」
「あの子がやったの??」
2人の争いを見ていた人達の視線が向いたのは、遠くに立っているフウカだった。
目に涙を浮かべてるフウカも、目の前で起きた出来事を見て驚いていた。
「ったぁ。てめぇ、何しやがるんだいきなり!?」
起きるなり、ゼウデュスはフウカのいる所へ駆けつけ、彼女を殴ろうとした。
だが、拳がいつの間に出来た白い壁とぶつかり、ゼウデスはまたもや跳ね返された。
「全く短気な奴だ。」
フウカのすぐ側でルークは気絶しているゼウデスを呆れたように見ていた。
そんなルークを見て、女の子達は顔が真っ赤になった。
「きゃあ!!ルーク様よ!!」
「きっと、さっきのもルーク様がやったんだわ!」
「女の子を守るなんて、流石ルーク様!!」
自分達の話で盛り上がってる女の子達を余所に、ルークはフウカを連れてロランスの所へ近づいた。
ロランスの隣には、まだ10歳にもなってなさそうな、頭に何かの動物の耳のような物がある男の子がいた。
「だ、大丈夫ですか?」
「平気さ、これ位。」
「まーたお前はこんなくだらない事やってたのか?」
「しょうがねぇだろう?あいつがまたトトを虐めるから…」
「だからって魔法まで使う必要はないだろう?馬鹿かお前は?」
「るっせぇな!俺は馬鹿じゃねぇよ!!」
「馬鹿だろう?どう考えても。」
ルークの釘を刺す言葉に、そこにいた全員が笑い出した。ロランスは怒りと羞恥の余り顔が真っ赤になった。
「とにかく、フウカに感謝しな。お前等の喧嘩を止めたんだ。」
「嬉しくねぇ!!お前の夢の少女なんか知るか!!」
今度はルークと喧嘩をするロランス。だが、フウカはルークが言った言葉を聞き逃せなかった。
自分がロランス達の喧嘩を止めた。要するに、あの白い壁は自分が作ったと言う事だ。
「何だ?じゃあ、お前等、女の子に負けたのか?」
「だっせぇ!あんなに威張ってて、女の子に手も足も出ないなんて。」
周りにいた人達はさらに大きく笑い出した。
そんな彼等の笑い声を聞くたびに、フウカは頭が真っ白になった。
おかしな世界に連れて来られ、見た事もない人に捕らわれ、挙句に自分もおかしな力を使った。
すべてを受け入れる事が出来なかったフウカの目には恐怖と悲しみが浮かんだ。そして、
パンッ!!
そのすべての原因となったルークの頬を、フウカは思いっきり強く叩いた。
唐突に起きた事にルークは勿論、他の皆も一瞬黙り込んだ。
「もう止めて!!」
「…フウカ?」
「あなたがやったんでしょ!?あなたが私をこんな風にしたんでしょ!?
どうして!?それであなたは私に何がしたいの!?」
「……。」
「私、この世界の人なんかじゃない!!あなたの事も、この世界の事も、私、何も知らない!!」
「……。」
「帰して!!私を元の場所に戻して!!もうこれ以上私を苦しめないで!!」
震える目、止まらない涙、美しても可憐なその姿は、触れるだけでも壊れそうだった。
やがて、フウカは遠くへ行ってしまった。今度はルークにも見えなくなるほど遠くへ…。
前 次
(3/5)
戻る