ここに来てから泣いてばかりのフウカ。今にも逃げ出したい気持ちでいっぱいのフウカ。
そんなフウカに、ルークは怒鳴る事も、呆れる事もなく、ただフウカをそっと抱きしめてるだけだった。
ルークがフウカを締め付ければ締め付けるほど、フウカの声は少しずつ小さくなって行く。
「おーい!!ルーク!!」
保健室のドアからドンドンと音が鳴り続いたと思えば、昼間来たオレンジ髪の男が入って来た。
「やれやれ、また夢の少女とデートか?」
「夢…?」
「あれぇ?フーちゃん、もしかして、自分が何者なのか知らないの?」
陽気な顔をしたオレンジ髪の男が自分に近づいてるのを見て、フウカは思わずルークの背中にしがみついた。
その男がフウカの目の前にまで近付いた時だった。
「ぎゃあああ!!!」
その男が急に悲鳴をあげた。
何事かと思って見てみると、ガーゼがあるその男の頬を、ルークが指で押していたのだ。
「怖がらせるな。お前がそんな風に笑うと皆逃げるぞ。」
「痛い……。」
頬を手で覆ったまま蹲った男が、フウカは少し可哀想に思えた。
言うまでもなく、その男をキリッと睨みつけている。
「痛ぇな!!何すんだよ!?」
「お前が悪いんだ。そもそも、その程度で痛むお前じゃないだろ。」
「痛むよ!!つーか、ちょっと話し掛けただけだろ!」
涙混じりの声でワンワンと叫ぶ男をルークは眉を吊り上げながら見つめている。
2人が睨みあう中、フウカがオレンジの髪の男の所へ近づいた。
「大丈夫?」
フウカが彼の頬にそっと手を触れると、男はさっきまでの痛みが消えていくように感じた。
「大丈夫に決まってるだろ!」
「さっきまで泣いてたくせに。」
「お前のせいだろ!!謝れよ!!」
男の言葉にルークは鼻で笑うと、フウカを連れて保健室から出て行った。
後にその男も付いて来てフウカに色々と話を掛け、そんな彼をルークが蹴っ飛ばしたのはその後の話である。
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