千年の出会い小説 | ナノ


「おーい、オスカー!!」

遠くから自分を呼ぶ声が聞こえ振り向くと、いつも一緒にいる幼馴染コンビが来ている。
成績も、性格も正反対の2人が一緒にいる事は実に不思議な事でもあるが、そんな事は今はもうどうでも良かった。

「今の女の子なんだ?彼女か?」
「迷子になったらしいから道を教えただけだ。」
「へぇー。」

ニヤニヤと笑うロランスを見てオスカーは顔を歪めた。表情を見てるだけでも怪しまれてる事が解る。

「まぁ、さっさと行こうぜ!」
「お前のさっさとはどれ位の遅さなんだ?」
「何だよー!!酷い言い方だな!!」

オスカーをジト目で見ながら怒りだすロランスだが、オスカーも、幼馴染のルークも、彼の言う事を聞いていなかった。

「あ、そうそう。来週集団旅行だろう?」
「それが何だ?」
「俺達が行くあの遺跡、悪魔が建てたらしいぜ。」

ニヤニヤと笑いながら語るロランスの噂話のような話を聞き、オスカーは目を細めた。

「…お前、そんな事信じてんのか?」
「何だよ!!歴史に付いて知るべきだと言ったの、オスカーじゃねぇか!!」
「歴史と伝説は違うだろ。そもそも、そんなのただの噂に決まっている。」
「ったく、つまんねぇ奴だな。これだから王族は嫌なんだよ。頭固ぇし。」
「固くて結構。」

高い声と低い声が言い争う中、3人の目の前ではとある出来事が起きていた。

「ご…ごめんなさい!」
「ったく、次からは気をつけろよ。」
「はい…本当に、ごめんなさい。」

前に居た男性にぶつかってしまい、何度も謝る女の子を見て3人はしばらくその場を動かなかった。

「あいつ、さっきの迷子の奴。」
「ふーん。ま、俺達には関係ないか。どうせ……」

「フウカ!」

ルークがいきなり叫びだしたせいでロランスは思わずひっくり返りそうだった。
気付けばその女の子の方へ駆けつけてるではないか。

「何やってるんだフウカ!」
「!?!?」

ルークがフウカの肩に手を載せた瞬間、フウカは大袈裟に身をビクリとさせて尻餅を付いた。
ルークが身を起こそうとすればフウカは暴れながら悲鳴を上げる。
そんな光景をオスカーとロランスはきょとんとしながら見ていた。

「……何だあいつ?」
「…ああ。誰かと思えばフーちゃんか。」
「フーちゃん?」
「あいつの夢の少女。えーと確か、フウカ…シュ…シュ…シュトーレン。」
「……シュトーレン?」

どう考えても間違ってるとしか思えない苗字を聞いてオスカーは目を細めた。
そんな中でもルークは未だにフウカと騒ぎになっていて、いつの間にかオスカーとロランスを含めた全員が2人を見ていた。

「…フウカ、悪い。」

そう言うと同時にルークが鋭い目付きでフウカを睨みつけ、フウカは全身の力が抜けたようにその場に倒れた。
ルークの胸に抱かれているフウカは血の気がなく、まるで大理石の彫像のようだった。


1時間目が終わった後の休憩時間、フウカを保健室に預けた後、ルークはフウカがここにいる訳を話した。
勿論、フウカがどこから来たのかも。

「異世界から誘き寄せた。と?」
「別に誘き寄せた訳じゃない。元々ここで生まれ育ったんだ。」
「でも、本人は認めてないみたいだぜ。」

事実、フウカはここが自分の故郷である事を信じていない。その前に、ここが何処なのかも知らない。
知らない人にいきなり連れて来られた挙句にあんな事を聞かれて少しショックを受けていた。

「で、どうするんだ?このままここに居させる訳にはいかないだろう?」
「…しばらくは同居して、大分落ち着いてきたら学校に通わせるつもりだ。」
「はぁ!?ちょっと待てよ!!同居って、俺達の寮にか!?」
「男子2人じゃつまんねぇと言ったの、お前だろう。」
「それとこれとは……!!」

話を終えるも前にチャイムが鳴ってしまった。
教室に戻る間、ロランスは腕をブンブン振ったり、ルークの背中をポカポカと殴り続けたりと、
決して届く事のない思いをルークにぶちまけていた。


 
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