千年の出会い小説 | ナノ


木漏れ日さす森の中、少女は木の下で気持ち良さそうに眠っていた。
鳥の鳴き声と、本のページがめくる音は少女の子守唄になっている。
すると、落ちて来た葉っぱが女の子の鼻をくすぐり、少女は起きてしまった。
身を起こすと目に映るのは光に照らされ輝いてる草原、あちこち飛び回ってる蝶、そして、隣で本を読んでいる少年。



目を開けると、そこは昨日連れて来られた部屋だった。夢だと思っていたが、そうではなかった。
今のフウカには何が夢で、何が現実なのか解らなかった。ただ解るのは、もう元の世界には戻れない事だった。
けど、ずっとここにいれば、あの茶髪の男の子に何をされるか解らない。
何とかしてでもここから脱出しなければならなかった。

扉を開けるとお城を連想させるような廊下があって、どこへ行けば出られるのか解らなかった。
窓から脱出しようとも考えてみたが、余りにも高く、足が滑った途端あの世へ行ってしまうと言っても可笑しくなかった。
かと言って他に出口らしき物は無い。この建物中走り回ってでも出口を探すしかないようだ。

部屋の外はそれはもう迷路みたいで、どのドアを開ければどこへ行くのかさえ解らなかった。
もしここが本物のお城なら無数の兵隊さんが廊下を歩き回ってたかも知れない。
けど、それらしき人物はおらず、掃除婦が何人か廊下を拭いているだけだった。
中世の宮殿の様な廊下をあちこち歩き回っていると、奥のほうから光が見えて来た。どうやらあそこが出口のようだ。

「おい。」

出口に向かおうとした瞬間誰かに肩を叩かれ、フウカの身体がビクッとした。
振り向けば青と黒が混ざったような髪をした男性が怪訝な表情でフウカを見ている。

「何やってんだお前?」
「え?あ…えーと…。」

フウカは言葉を出す事が出来ず、ただそこに立ってるだけだった。
誰かに連れて来られて、気が付いたらここにいた。なんて簡単に言える筈がない。
ここは隙を見て逃げるしかなかった。

「あ!あそこに何かがある!」
「……。」

男性が後ろを振り向いてる隙に出口の方へ走り出そうと思って天井の方へ指を指したがその男性は自分を見続けている。
もはや逃げる事さえ出来なくなったと思ったフウカはその場で固まってしまった。

「…お前迷子か?」
「うぅ……うん。」
「だったら最初からそう言えばいいだろう。」
「…ごめんなさい……。」

ほんの些細な事で面倒事を起こそうとしていたフウカに男性は溜め息を吐いた。

「出口ならここから逆の方向だぞ。あのドアは単なるカモフラージュだから行っても出れやしない。」
「あ…うん。ありがとう。」

90度の角度で頭を下げ、やがて出口の方へ走っていくフウカを見て男性は眉を吊り上げた。

「……つーか、あんな奴いたか?」


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