千年の出会い小説 | ナノ


純子との買い物を終え、家に帰った風香は自分のベッドに潜り込んだ。
いくら友達の頼みとは言え、1時間も買い物に付きまとわれたら疲れるのも当然だ。

「ただーいまー。」

妹の麻衣が帰ってきたようだ。
麻衣は家に入るなりカバンをそこら辺に投げ飛ばすと、ドタバタと音を出しながら風香の部屋に入って来た。

「あー!!やっぱり寝てる。ママに怒られるよ!!」

麻衣が何度も風香を揺さぶっても風香は起きなかった。

「ママに言い付けるよ!?」
「言えば?どうせ怒られれば済む事だし。」
「もう!!お姉ちゃーん!!」

いくら起こされても、疲れがそう簡単に取れるはずがない。
風香は毛布にの中に潜り込み、ただ麻衣の拳を受けるだけだった。

「もう、知らない!!ママに追い出されても知らないからね!!」

そう言って麻衣は部屋から出て行った。追い出すと言う意味が何なのか小学生の女の子にはまだ解らないようだ。

ようやくベッドから出て来た風香は鏡の前で眼鏡を外し、自分の顔を見つめてみた。
眼鏡のレンズで隠されていた黒い瞳はまるで宝石の様で、見るだけでも吸い込まれそうだった。

「はあ……。」

だが、風香は自分の目はもちろん、自分のほとんどが余り好きではなかった。
他の誰かと比べて綺麗な訳でもない。勉強も妹の麻衣みたいに上手い訳でもない。
だからって何か得意分野がある訳でもない。
風香は自分が世界で一番平凡で頼りにならない少女のように感じた。

再び眼鏡を掛けると、ベッドから携帯のバイブの音が聞こえた。
きっと純子なのだろうと思い電話に出たのだが、

「はい、鈴原です。」
「……。」
「…もしもし?」

何の返事も無かった。ボリュームが低いから聞こえないのかなと思って見てみたがそうでもない。
いたずら電話なのかと思って切ろうとした時だった。

「……カ。」

ようやく最初の言葉が聞こえた。だが、その声は純子じゃない所か、男性の声であった。

「…るか……フ…。」
「???」
「……ル…!!!」

最後に何かの衝突音が聞こえたと同時に電話は切れてしまった。


 
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