マジバケ小説 | ナノ


レーミッツ宮殿の門を開けると、太陽の光に照らされキラキラと輝く宮殿が姿を表した。

「わぁ〜綺麗〜!おとぎ話に出てくるお城みた〜い。!!」
「本物の宮殿だからね。」
「んな事はどうだっていいよ。さっさと中入ろうぜ。」

白い大理石の道を歩きながら先へ進み、しばらくすると、キルシュの「何じゃこりゃー!!」と言う叫び声が辺り一面に響いた。

「何で迷路になってるんだ!?」
「知らないわよそんなの。庭師さんが面白そうだと思ったんじゃないの?」
「これじゃあ探すどころか中に入れないじゃな〜い!!」

奥には宮殿の前に広がる大きな垣根があった。だが、普通の垣根ではなく何故か迷路になっているのだった。
こんな所を通って宮殿の中に入れたブルーベリー達が尊敬できる。

「こんな所、いっそ燃やしちまおうぜ!!」
「火事でも起こして宮殿ごと燃やすつもりなの?場所は知ってるからそんなに慌てて物事決めないで。」

ミエルの言葉はごもっともだが面倒事に巻き込まれたくないキルシュの気持ちも理解できる。
このプレーンに来た事のある人物が居る事がむしろ幸いな事だ。

「そう言えば〜ここ一本道だったよね〜。だったらガナッシュもここ通ったんじゃな〜い?」
「可能性はあるかもね。でも、今はベリー姉達が先でしょ?」
「探してる間に見つかるといいっぴ。ガナッシュが居たら怖いものなしだっぴ!!」

クラスの実技トップであるガナッシュがいれば安心だ。ピスタチオじゃなくてもそう思うだろう。
だが、あんな事件が起きたのに、その原因となった彼に何と言えばいいのか?今の4人は知りようもなかった。

ようやく宮殿に入ると、広くて、豪華な飾り付けが多く、床全体が赤い絨毯に覆われていた。
2階の階段を上がろうとした瞬間ピスタチオの鼻がぴくぴくと動いた。

「ペシュの匂いがするっぴ!ブルーベリーもだっぴ!」
「本当〜!? この中にいるの〜!?」

「そこまでだ!これ以上、宮殿への立ち入りは許さん!」

聞き覚えのある声が宮殿に響いたと思えば、先に宮殿に来ていたトルティーヤが、親衛隊と共に階段から4人を見ていた。
だが、帰れと言っても仲間を置いて素直に帰るわけが無い。

「まだ止めるつもりなのトルティーヤ。」
「お前達のために言っているのだ。エニグマの話は聞いているだろう?そいつがこの中にいることが分かっているんだ。
お前達では危なすぎる。早々に立ち去るがいい。」
「危険なんか、いつも承知の上だぜ。」
「承知だと?お前に何が解るかッ!!この中にいるエニグマは恐らく3体。しかも、手強い相手だ。簡単に倒せると思うなッ! 」

今までの戦いでも苦戦したエニグマが3体もいる。下手すれば何人かは無事にはいられないだろう。

「だけど、中からブルーベリーとペシュの匂いがするっぴ〜。」
「不用意な…何故わざわざ危険な場所へ…。」
「ムスコさん……あっしらも力を貸して、共にエニグマを倒すのが良いのでは……?」
「しかし……」
「意地張るなよ。これだけ頭数が揃ってんだ。今がエニグマを倒すチャンスじゃないのか?」

トルティーヤは不愉快そうな表情になった。その表情には迷いや悲しみなどの感情が込められている。

「……倒す……誰も彼もが口を開けば倒すだの殺すだの……なんて哀れな……。何故倒す必要がある……?奴等が何をした!?光に怯え、宮殿に引き込もっているだけの相手をッ……!」
「エニグマの肩を持つっぴ?どうかしてるっぴ!?こっちにはエニグマを倒す理由があるっぴ!!」

村を守るためにはエニグマは倒さなければいけない。エニグマと争わなければいけない。
だが、トルティーヤは愛の大使。
敵ならば倒さなければならない、殺さなければならないという事がまだ彼には受けられないようだ。
そんな彼に言葉を掛けたのはミエルだった。

「あなた、本当は解ってるんでしょ?エニグマが、ただ光に怯えてるんじゃないって。
あいつ等は光を嫌ってるから、光が目障りだから、いっそ消し去ろうと、この世界を破壊しようとしてるのを。
だからあなたは倒しに来た。違う?」
「……。」
「だったら、最後までその意地を通しなさいよ。自分から倒すと言い出して、途中で引き返す様な中途半端な気持ちでいて、そんなんで村長として村を守れると思ってるの?」

ミエルの言葉にトルティーヤは返事をしなかった。
彼はまだ複雑そうな顔をしている。愛の大使の子供であってまだ迷っているようだ。

「ムスコさん、あっしらも愛の大使の端くれ。ムスコさんの気持ちはよ〜く分かりやす。しかしここは……。」
「これ以上言っても無駄のようだな。お前達に事情があるなら倒すのも仕方がないこと。しかし私は……!」
「ムスコさん、今は人を助ける時。誰も手を汚さずに生きてゆける時代じゃありやせんぜ。手を貸してやりやしょうぜ。」
「俺達だけでやるさ。お前はここで待ってな。」
「フ――――――――――――ンだ!!大人しく待ってるっぴ!手柄はくれてやるっぴ!」
「ピスタチオ〜そ〜ゆ〜こと言わないの!」

偉そうに胸を張るピスタチオとしつけをするアランシア。
トルティーヤ達を通り過ぎながらキルシュ、ピスタチオ、アランシアが2階へ進んで行った。
ミエルはトルティーヤを通り過ぎる時、彼にしか聞こえるような声で囁いた。

「誰かに優しくする事だけが愛なんかじゃない。時には厳しくなったり、時にはその人を傷つけたりする事もある。
形は違うけど、どれも皆愛なの。愛する人のために、自分自身を捨てる事も。どうするかは、ゆっくり考えればいい。」

そしてミエルも2階へ上がって行った。

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