マジバケ小説 | ナノ


遺跡を抜け出して着いた所は可愛らしい文鳥がチュンチュンと鳴きながらあちこち飛び回っている文鳥ヶ原だった。

「この俺がエニグマの仲間だってぇッ!?冗談行っちゃいけねぇ!」

突然、驚いたような怒りが混ざった ような叫び声が響き、文鳥が何羽飛んで行ってしまった。

「てめぇ、その変な乗り物から出てきて話をしやがれ!! 」
「態度悪ィぞ!!」
「いや、態度は確かによくないが、悪い奴ではなさそうだ。村のものに説明がつけばそれでいい。我々が納得出来る答えを聞かせてもらいたいお前はどこから来たんだ?」
「しょうがねぇなぁ。ちゃんと聞いてろよ。さっきから何度も説明してるだろ ?」

遠くから聞こえる声を聞いて4人は疑問を抱いた顔になった。

「今、バルサミコの声が聞こえたような気がする〜 。」
「ああ、俺も聞こえたよ。ピスタチオ、お前は?」
「文鳥の声に、文鳥の匂いがするだけだっぴ。」
「私は聞き覚えの無い3人の声。」

本当にバルサミコがいるのだろうか?そう考えながら声がした方へ行くと、

「何者だ!!お前達!!」
「キャッ!!いや〜んびっくり〜。」

いきなり怒鳴られた。ミエルが聞いた3人の声の正体は戦士の格好をした愛の大使の3人だったようだ。

「オイラ達、変な魔物に追われてるっぴ。」
「エニグマって奴だ。知ってるか?」
「エニグマ!!それはあっしらにとっても敵!」

愛を最も重要に思う愛の大使までエニグマを拒んでる。エニグマはそれほど厄介なもののようだ。

「ところであんた等こそ何者だっぴ?」
「あっしらは、ワクティ村の村長親衛隊ッ!タルトとタタン!そして、真ん中においでなのが村長のムスコさんだッ!ムスコさんからも一言どうぞ!」

紫色の細長い愛の大使タタンが自己紹介をし、真ん中にいる小さな男の子に声を掛けたが、ムスコと呼ばれた男の子はタタンを睨み付けた。

「ムスコさんではない!!村長と呼べ!村長!」
「いやしかし、呼べと言われても村長はあなたのお父上で……。」
「ワクティでは、愛のデッパリを持つものが村長と決まっている。愛のデッパリを父上から譲りうけた以上、私がワクティの村長だ。」
「愛のデッパリ……別名村長ワンド……承知しておりやすとも。でもそれは、ムスコさんが無理矢理ガトー殿から……。」
「ムスコさんではないッ!私が村長だッ!!逆らう奴は、父上に言いつけてクビにしてやる!!」

自分が村長だと言い張りながらもまだ父親を頼っている。そう言う所はまだ子供っぽい。

「そこの余所者ども!早々に立ち去るがよい。この辺りは、我等愛の大使が管理している!近頃ではエニグマも出没すると聞く。」
「だけどムスコさん……私達……。」
「ムスコさんではない!私の名前はトルティーヤ!!ワクティ村の村長だーーッ!」

話を終えたのか、トルティーヤは親衛隊を連れてワクティ村へと帰って行った。
さっきまで共に騒いでいたバルサミコと、化け物のような形をした魔バスを放って置いたまま…。

「何だよあいつ、偉そうに!!」
「仕方ないよ。いきなりどこの誰なのかも解らない人が自分の故郷に来たら、誰だってああなるよ。」

「いよう!悪ガキども!生きてやがったな!魔バスの天才ドライバーもこっちに来てるぜ!」

キルシュが嫌そうな顔でトルティーヤが通った道を見つめてると、魔バスの窓からバルサミコの顔と声が出てきた。

「バルサミコだっぴ!」
「あ〜本当だ〜。」
「魔バスと運転手か。こんなもんまで連れてくるとはな。」
「いやぁ〜、さっきはエニグマの仲間だと勘違いされて絡まれたんだ。全く、俺のどこが悪い奴に見えるってんだ!?はぁ〜ん?」

バルサミコには悪いが太鼓みたいに大きいお腹、魚のヒレのような手足、避けたくなるほど不良っぽい顔、どこからどう見ても悪い奴にしか見えなかった。

「とりあえず乗れよ。遠慮なんかすんなよ。自分ちだと思ってくつろいで行くんだぞ!」

バルサミコがレバーを引くと、唸り声のような音を出しながらタラップが降りてきた。
こんな物騒なものをどうやって自分の家だと思えるのだろうか…。

前 
(1/3)
戻る
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -