マジバケ小説 | ナノ


魔法学校の生徒達の一部がキャンプの途中エニグマに攫われ、その内1人はエニグマと融合を果たしている。
ただのエニグマではなく、エニグマの王とも言えるケルレンドゥとだ。そんな噂がエニグマ憑きの魔法使いの間に広まるにはそれほど長い時間を必要としなかった。
そんなガナッシュを目の前にした魔法使い達は彼の意向を伺い、戦争の計画を立てていた一部も、その計画を破棄するようになった。
だが、魔法使い達は知らなかった。目の前にいる魔法使いの少年にはケルレンドゥどころか、魔法の痕跡すら存在してはいない事を。
確かに、ガナッシュは一時的ながらもケルレンドゥと融合している。
だが、彼の意思によってその融合は解け、その代償として全ての魔力を失ったのだ。
それでもガナッシュは彼等に臆する事無く対等に渡り合い、魔法使い達はガナッシュがケルレンドゥと融合している事を疑う事はなく、ガナッシュの支配下に治まるのに半年の時しか経たなかった。

そんなガナッシュを擁するグラン・ドラジェ派閥が国を常渥し、ほとんどのエニグマがガナッシュによって支配されていた頃、
ガナッシュがケルレンドゥと融合していると言う噂は牢獄されているヴァニラ・ナイトホークにも伝わった。
ガナッシュの姉であり、かつてたくさんの人を死に至らせた恐怖の存在でもあるヴァニラは、現在シブスト城で単身幽閉されている。
暗くて冷たい牢獄の中に閉じ込められている彼女の瞳には光が宿らず、ただ絶望のみがそこに籠っていた。
自分がエニグマと融合したせいで村が破壊され、人々が死に、やがては最愛の恋人さえ命を落としている。
すでに闇の精霊の血が流されているという理由で自己嫌悪に陥ってはいたが、その事件によって生きる意味をほとんど失っていた。
そんなある日、弟のガナッシュが自分の面会に来たと言うことを聞き、ヴァニラは何かを覚悟するかのような表情になった。
弟にはケルレンドゥが憑いている。きっとこれが最後の決戦になるだろうと思っていた。
やがて、ガナッシュの姿が目に映った時、ヴァニラは思わず目を見開いた。
目の前で自分に向けて穏やかに笑っていたのはエニグマが憑いているどころか、魔法すら使えないただの小さな少年だったのだ。

「何もかも無くしちゃったよ。でも、満足している。」

とても少ない言葉、けど、何か強い意味が込められている言葉に、ヴァニラはとうとう耐えることが出来ず、涙を流してしまった。
そんなヴァニラを、弟は何の言葉も放つ事なく、ただ見守っていた。

やがてヴァニラは釈放され、同時に彼女もグラン・ドラジェ派閥に合流。そしてその後、彼女も二度と魔法を使えなくなっていた。


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