マジバケ小説 | ナノ


闇のヴェールを貰ったミエル達は死の回廊に行く前に、パーティーを変えるため、魔バスへと戻った。

「これからガナッシュ達の行くつもりだが、その前に、話して置きたい事がある。」

バスに居る皆が自分を見ている事を確認すると、トリュフは深呼吸をし、再び口を開いた。

「俺達は先程闇のヴェールを貰って、これを着れば、死の回廊に行けるようだ。その死の回廊を超えれば、ガナッシュとキャンディに追い付く。けど、その前に、パーティーのメンバーを変えようと思っている。
皆知ってると思うが、キャンディには今エニグマが憑いている。場合によっては、戦わなければいけないかもしれない。」

落ち着いて話すトリュフの言葉を聞いたクラスメートの顔には緊張が浮かび上がっていた。

「それで、キルシュとティアクラウンは、悪いがここに残って欲しい。」
「え?」

予想外の言葉に2人はトリュフを見つめた。
特に、他の誰よりキャンディを思っていたキルシュは、どうも納得がいかないようだ。

「何でだよ!?俺も連れてってくれよ!!」
「キルシュ。私も残った方がいいと思う。」
「何だよ2人揃って!!もうすぐキャンディに追い付くんだろう!?
それなのにただ待ってる訳にはいかねぇよ!」
「その気持ち、解るよ。でも、お兄ちゃんの言った事、聞いたでしょ?
キャンディには今エニグマが憑いている。そのエニグマが正体を表して襲いかかった時、戦える?」

核心をつかれた言葉に、キルシュは何も言い返せなくなった。が、彼の眼はとても複雑そうだった。

「…お前は、お前はどうするんだよ?」
「私は勿論行くわよ。ここまで来たのに、途中で引き下がる事など出来ないからね。」
「本当にそれで良いのかよ!?お前、キャンディと……」
「親友だから行くのよ。私が倒しに行くのはキャンディじゃない。キャンディに取り憑いたエニグマ。
それに、まだ知らないだけで、融合を解ける方法があるかもしれない。
なのに何もしないでただ待つだけなんて、私には出来ない。」

自分を真っ直ぐに見つめているミエルは明らかに今の自分とは違う。
そんな彼女を目の前に、キルシュは自分も行くと言い出せなかった。

「ミエル〜、私が行く〜。」
「…アランシア?」

あまり戦う事を望まなかったアランシアがパーティーに加わり、ほぼ全員が驚いた表情になっていた。
特にキルシュは表情がきつくなってるアランシアをただ唖然と見ていた。

「アランシア、今遊びに行ってるんじゃないのよ。これからの戦いは、成績が決まる様な単純な事じゃない。」
「解ってる…それでも行く。行きたいの。」
「……そう。」

覚悟を決めてる様な目をしているアランシアを、誰一人止められなかった。

「私…私も行きたい。確かに、戦えないかも知れない。でも…!」
「ティアクラウン。お前が行っても、ただキャンディの怒りを増すだけだ。それ位、お前だって解るだろう?」
「……。」

行く事を薦められなかったオリーブも行きたいと言うが、トリュフはそんな彼女を止め続けた。

「俺は行くヌ〜。いくら変わっても、キャンディはキャンディだヌ〜。きっと元に戻れる方法もある筈だヌ〜。」
「あたしも行くよ。」

オリーブに変わってレモンがパーティに入った。

「……これでもう良いかな?」
「おい待てよ。」

バスから出ようとした時、何故かカシスが急に声を掛けた。
カシスはミエルの腕を掴むと、険しい表情でミエルに問い詰め出した。

「何が目的なんだよ?」
「…言ったでしょ?キャンディを迎えに行く。それ以外何があるって言うの?」

気持ちが全く読み取れない無表情で語るミエルを見て、カシスの表情はより険しくなっていた。

「ミエル、行こうか。」
「シードル変われ。」
「へ?」
「……俺も行く。」

突然自分も行くとカシスが言い出し、ミエルは眉を顰めた。

「カシス、今は喧嘩してる場合じゃ…」
「そんなんじゃねぇよ!!俺も行こうと思っていただけだ!」
「…好きにすれば?」

小さくそう告げると、ミエルは手を振り払った。

「後トリュフ、お前も残れ。」
「……は?」

何を言うかと思えば、カシスはトリュフにバスに残れと言っている。
キャンディを追うのはさて置き、ミエルを1人にはさせまいと思っているトリュフにとって今の言葉は理解に苦しい事だった。

「お前まで来たらこいつはお前に頼ってばかりになる。今回は本気を出して貰わないと困るんだよ。」
「それでここにいろと?どんな奴なのか解らない奴を相手に1人で戦わせろと言うのか!?」
「じゃあ、私が行きますの!」

2人の会話を遮るかのようにペシュが勢い良く手を上げた。

「私なら回復魔法で皆の役に立てますの!トリュフちゃんも心配する必要ありませんの!」
「……。」
「これなら不満は無いだろう?じゃあ、行ってくるぜ。」
「チッ。」

不満そうに舌打ちするトリュフはペシュと変わり、パーティを変え終えたミエル達は死の回廊へと向かった。

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