マジバケ小説 | ナノ


結局、メースのためになる方法は1つも見つかる事なく一日が過ぎ、次の日の朝、ミエル達はガナッシュ達を探しに行く準備をしていた。

「ピスタチオちゃん!許しませんのぉ!!」

大の字になって眠ってるペシュは夢の中でもピスタチオと喧嘩をしていた。
喧嘩をするほど仲がいいと言うが、だとすればこの2人はどれだけ仲がいいのだろうか?

「ペシュ起きろ。ピスタチオはここにはいねぇよ。」
「うるさいですの!!」

そんなペシュを起こそうとしたカシスの顔面へペシュは枕を投げた。
ピスタチオをボコボコにするだけの事あって、その威力は半端ない。
だが、カシスもやられてばかりはいられない。

「起きろーー!!」
「わふっ!!」

カシスが毛布をぐいっと引っ張ると、ペシュはそのままベッドから落ちた。
多少ぼんやりしているが、ようやく夢から覚めたようだ。

「おはようですの。さっさと支度しますの!」

起きてすぐ説教が始まった。とても無意味な説教が。

「モウシテルゼェ。オマエイガイ。」
「……あ、あ、あ、あうわ〜!!!」

周りを見て自分だけ遅れてることに気付き、口をパクパクさせながら大部屋をヒューンと飛び回り続けた。
やはりどこか抜けてるが、学級委員だから少しはしっかりしてほしいものだ。
ようやく支度を終えたペシュを最後に、ミエル達は宿屋から出て行った。
ちなみに、シードルはいつの間にか起きていて外でうろうろしている。
外に出てみるとすでに船が戻っていた。今はまだ整備中で、直すには少々時間がかかるようだ。
船が使えるまで待とうと思ったその時、リーダーの家で門番とメースとの会話がまた始まっていた。

「どうして会わせてもらえないんですか? 教えて下さい。」
「それはだな…、えー、シナモン様は今、お病気で臥せっておられる故にだな、また後日訪ねられるが良い。」
「病気? 本当に病気なんですか!?」
「言うにことかいて!本当に病気かだと!? 私が嘘をついていると言いたいのか!?」

昨日会った時、シナモンは病気どころか、そんな気配すら無かった。門番はメースを追い払うためにまた嘘を吐いている。
そんな門番を見て堪忍袋が切れたペシュが、2人のいる所へ飛んでいった。

「おじさん、嘘はいけませんの!!
昨日あんなに元気だったシナモンちゃんがいきなり病気だなんてどう考えても可笑しいですの!!」
「う、うるさい!!お前には関係ないだろう!!」
「おじさんに言われたくありませんの!!」
「もういいよ。いいから。」

もはや我を失ってるペシュを宥め、メースは再び門番へ振り向いた。

「せめて…病名だけでも教えてください。」
「病名は…ウーズ熱だ。お前みたいな奴とコソコソ会ってるから、こんな事になるんだ。」

メースは病名を聞いたとたん、顔を青ざめた。ウーズ熱。ウーズ熱。メースの両親が掛かった病気だ。
アイスシードで治す事が出来るが、誰一人取りに行こうとせず、結局メースの両親は命を落とした。
その病気にシナモンが掛かったと聞いてショックを受けているのだろう。

「う、嘘だ…そんなことが……。」
「とにかく立ち去れ。邪魔だ。」

何度追い払おうと必死だったが、メースはしばらく考え込むような顔になりながらそこに立っていた。

「取ってきます…。」
「なんだって〜???」
「アイスシード…取ってきます。」
「アイスシード…まさか…!! ジェラ風穴に入るのか!?」
「待ってて下さい。必ず戻ります。」
「ちょっと待て!! おい!! アイスシードなど取ってきてもあんな物は効かんぞ!!ウーズ熱は治らんのだ!!解ってるのか!!」

振り向きもせずタル船に向かうメースを、誰1人止めようとしなかった。
彼を見ていたヴォークスも鼻で笑うと、何も無かったかのように門番の仕事に戻った。

 
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