マジバケ小説 | ナノ


宿屋に行くと、先程村長の家の前にいたヴォークスの少年と、もう1人の少年が互いに話をしていた。
その少年は、衣装はほぼ全体が暗緑色で、茶色い癖髪が片方の目を隠していた。

「トリュフちゃんですの!!」

ペシュがその少年に指を指しながら叫びだすと、ベッドに座っていた2人がペシュ達の方へ振り向いた。

「お前は、ペシュ?カフェオレにカシスまで?」
「お知り合い?」
「クラスメートだ。つーか、お前等、何でここに?」
「それはこっちの台詞だぜ。休学していなくなったと思えば、こんな所にいたのか?」

意外な人物が意外な場所にいる事に驚くクラスメート達。だが、その会話にまともに入れなかった人が1人いた。

「……誰?」

ミエルだ。彼女は目の前に居る、トリュフと呼ばれた少年が誰なのか知らない。
隣にいる事に気付いたカシスがミエルにトリュフを紹介した。

「ああ、ミエルは知らないんだよな。こいつは、トリュフ・カオスロード。ミエルが学校に来る前に休学してて……」

カシスがトリュフを紹介する間、トリュフはミエルを見つめていた。
片方しか見えない空色の瞳には、カシスを見ているミエルが、鮮明に映っている。

「でな、トリュフ。こいつはつい最近転校した子で、名前は…」
「ミエル・スノードロップだろう?校長から聞いた。」
「ええ!?いつですの!?いつ聞いたんですの!?」

カシス達がトリュフと話す中、ミエルは隣にいたヴォークスの少年に声を掛けた。

「こんにちは、さっきは大変だったね。」
「あ、そうでしたの!!」
「ああ……なんだか、恥ずかしいところを見られちゃったね。」
「恥ずかしくありませんの!!愛を感じますの!!」
「ハハハハ…そうだね。」

ペシュの言葉にヴォークスの少年は顔が赤くなった。

「僕はメース。さっきのハンカチを届けるってのは、シナモンが考えた作戦だったんだ…。少しずつ、村の人と馴染めるように…ってさ。
だから、シナモンのためにも、少しずつ、諦めないで村の人と馴染もうと思って…。だから、明日また行ってみる。」
「よしな、メースちゃん。あんまり目立ったことしてると痛い目にあうよ。」

後ろから宿屋の管理をしていたヴォークスがメースに近付いた。痛い目に合う?何か事情でもあるのだろうか?

「???どうしてですの?」
「メースちゃんの両親が死んだのは村の者のせいさね。メースちゃんの目を正面から見れる大人は1人もいないのさね。」
「どう言う事ですか?」
「ウーズ熱はアイスシードさえあれば、簡単に治せる。沼の真ん中の氷の島の洞窟にグラッシの花があり、その花がアイスシードを実らせることも、皆知っておる。ただ、誰にも、それを取りに行く度胸が無かったんじゃ。
大昔の言い伝えを引っ張り出してきて、やれ『悪魔の熱だ』とか、『呪いの熱』だとか騒いで、誰もアイスシードを取りに行こうとはしなかったのさ。それだけの話さね。」

なるほど、そう言うことだったのか。メースの両親を見殺しにした事を住人は隠したい、忘れたいと思っている。
メースがこの村にいると、その事を思い出してしまう。
嫌な思いに支配される位なら、その事を思い出させる存在を追い払う方がマシだ。
と言う、大人気ない考えのせいで、メースは村から白眼視されていたのだった。

「まあ、言わばプライドを守るための行為さ。バカな話だ。」

眉を顰めながら呟くトリュフ。だが、メースは悔しそうな顔をする事もなく、ただ小さく笑っていた。嘲笑うようではなく、優しい笑顔で。

「旅の人の前でそんなことを言わないで下さい…。知ってましたよ。そのことで村人を責めるなと言うのが、父の最後の言葉でした。
自分のために命を懸けろとは言えないでしょう? 父は笑ってましたよ…。」
「だったらなおさら村の人に解って貰いたいですの!」
「ク〜ッ!ナカセルネェ〜!ナカセルジャネェ〜カ!コンチクショイッ!!」
「村の人に解ってもらうために大切なのは、言葉ではなく、僕が何をするかなんです。」
「大人になったね…メースちゃん。ご両親が亡くなった時はあんなに小さかったのにね…。
ゴメンね、おじさん何にもしてあげられなくて…今日は泊まって行きな。皆も一緒に…タダでいいからね。」

メースとペシュ達が寝るベッドを決める中、ミエルはメースを見つめていた。

楽しそうに語り合うメースを見るその目は、何だかとても悲しそうだった。

to be continued……

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