マジバケ小説 | ナノ


「カッシー!!速い、速い!!」
「うるっせえな。ちゃんと付いて来てるだろう!」
「カッシーが無理やり腕引っ張るからでしょ!?痛いから放してよ!!」

沼が足の近くまで着いたとき、カシスは手を放した。そんな2人をペシュとカフェオレも追いかけてきた。

「もう!!喧嘩はいけませんの!!皆仲良くしますの!」
「ソウダソウダ!ケンカハンタイ!ボウリョクモハンタイ!!」
「暴力はしてねぇだろうが!!ったく、あいつも何考えてんだか!」

仲間が危険なのかも知れないのに知らん振りをする。自分の事しか考えないシードルにカシスは苛立ちを感じていた。

「……はぁ。とりあえず、村長の家に行ってみよう。ナイトホーク達が南に行ったのなら、ボート、借りなきゃいけないでしょ?」
「…ああ、そうだな。」

村長の家に入ると、赤いポンチョを纏っている茶色いヴォークスの老人がいた。

「私がマサラティ村のリーダー、ジンジャーだ。
この村が、闇のプレーンの中でも平安を保っていられるのは私がいい仕事をしているからだ。お前達も、この平和を存分に楽しむがよい 。」
「お気遣いは嬉しいのですが、船を借りたいんです。」
「うむ、自由に使うと良い。ただし、沼の真ん中の氷の島へは行かぬことじゃ。氷の島にあるジェラ風穴。そこにはとんでもない魔物がおるからの。」

なんとオープンな!余所者にあっさりと船を借りる許可をくれた。余りにもオープンな性格に呆れてしまったが、船を借りれる事は何よりも幸いな事だ。
家を出ようとした時、門番をしていたヴォークスの男が入ってきた。

「リーダー、娘さんのことですが、ちょっとよろしいか?」
「なんだ? またいつもの話か?」
「今日もシナモン様は例の場所へおいでのようで…村の者たちも、いつまでも大目に見るとは限りませぬ。
実際に…『リーダーの娘だから、ルールは守らなくても良いのか?』…との声を聞かれまする。
このままでは、何か事件が起きるのではないかと心配でなりませぬ。」
「分かっている。村のルールは守らせる。リーダーの娘であろうと例外ではない。私は公平なリーダーだ。」

シナモン、村に来る前に会ったヴォークスの少女だ。例の場所とは、一体何処を示しているのだろうか?
2人が話を終えると、話題の人物であるシナモンが戻ってきた。
門番の男はシナモンを見ると、再び門番をしに外へ出て行き、ミエル達も村長の家から出て行った。

外に出ると、門番が赤いショールを掛けているヴォークスの少年と言い合いをしていた。
その少年の右手には女性が持ってそうなハンカチがあった。

「君をこの家に入れるなとのリーダーのお達しがあるんだ。帰りなさい。」
「でも、シナモンの忘れ物…じゃなくて…シナモンのハンカチが森に落ちてたから…。」
「ならば、私が預かろう。」
「直接渡したい……。」
「それは出来ぬ。」
「どうして?」
「ルールだ。どうしてもと言うなら、リーダーの許可を仰がねばならない。」
「リーダー? シナモンのお父さんのこと? だったら、今すぐ許可を…。」
「リーダーはお疲れだ。また後で来なさい。」
「……それじゃ、また明日来ます…今日は、宿に泊まりますから、何かあったら、宿の方へ連絡お願いします…。」

そう言い残すと、少年が宿屋へ向かった。門番が4人を通す中、ペシュはぷんぷんと怒りだした。

「あのおじさん嘘つきですの!リーダーはちっとも疲れてませんの!」
「何か事情でもあるのかな?」

何故門番はあの少年を中に入れようとしないのか?2人の女の子はやたらと気になっていた。

「行ってみますの!!何があったのか、ちゃんと確かめてみますの!!」
「おい待てよ。ガナッシュ達はどうするんだよ?」
「うう…でも、気になりますの!」
「……行ってみようよ。」
「はぁ!?!?」
「何があったのか聞くくらいいいでしょ?」

どうしても、と言うミエルにカシスは溜め息を吐いた。
結局、2人の女の子の頼みに負け、4人は少年が行ったらしき宿屋へと向かった。

 
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