マジバケ小説 | ナノ


見た目はとても穏やかな雰囲気を出してるマサラティ村に辿り着き、村長と話をしようと村長の家を探していた時、店からとある少年が出て来た。先にマサラティ村に行った5人の中で、唯一村に残ったシードルだった。

「シードル!!」

最初に彼に気付いたミエルは駆けつけたと同時に彼に抱きついた。
いきなり抱きつかれたシードルは顔が真っ赤になり、どうする事も出来ずただそこに立っていた。

「シードルちゃん!!無事でしたの!?」
「何とか生き長らえてるみたいじゃねぇか!!ところで、お前一人か!?他の連中と一緒じゃなかったのか!?」

ようやくミエルを放せたシードルは、カシス達に対して不満げそうな顔をしていた。

「そんなに大声で喋らないでよ。みんな見てるからさぁ。」
「ハズカシガッテルバアイジャネェダロ!ホカノミンナハイッショジャナイノカッテキイテンダ!」
「他の連中って、ガナッシュやオリーブたちのこと?彼らだったらエニグマの森に行くって、沼を渡ったよ。」

遅かった。4人はすでにエニグマの森へ向かったようだ。
とは言え、先まで共にしていたのに、明らかに他人行儀してるシードルが可笑しい。

「本当にエニグマの森を目指しましたの!?一体どうしてですの!?」
「自惚れてるのさ、彼等。きっと、エニグマと戦っても勝てるつもりなんだ。やってられないよ!」
「いや、やってられないとは言ってもだねぇ………皆、エニグマに攫われてこっちに来てる訳だし、
皆を探すとなると、エニグマの森へ向かわざるをえないんじゃないかねぇ。」
「その通りかも知れませんの。エニグマに恐れていてはいつまでも、皆に会えませんの……。ショコラちゃんも、エニグマの森に連れて行かれたかもしれませんの。」

カシスとペシュが説得しても、シードルは不満げの顔のまま、背を向けて囁いた。

「僕はエニグマの森へなんか行かないよ。」

自分とは関係ないと言ってるような言い方で語るシードルにカシスはカッとなった。

「何だって!?友達がどうなったっていいってのか!?」
「そんなこと言ってないよ。現実の話をしてるのさ。僕達だけで何ができるって言うのさ!!下手に動いても、問題を大きくするのが関の山さ!!安全な場所でじっとして大人の助けを待つのが僕らがすべき事さ!!違うかい!?」
「お前は正しいかも知れないよ。だけど、本当にそう思うなら俺達を助けてくれる大人をどこかから呼んで来いよ!!俺達が何もしなかったら、その間に他の連中がどうなるか解らないんだぜ!!」
「そんなこと言われても僕、困るよ。」
「もう、止めて!やっと会えたのに、ここで喧嘩しなくてもいいでしょ!?」

ミエルが間に入り、2人の喧嘩を止めた。カシスはまだシードルを睨み、シードルはカシスから目を反らす。
相変わらず喧嘩ばかりする2人に、ミエルは溜息を吐いた。

「オレタチ、マバスデイチドガッコウヘ、モドッタンダ。ダケド、コンカイノケンハ、オトナニタヨラズジブンタチデ、カイケツスルコトニシタンダ。」
「無茶苦茶だよ、そんなの。みんなヒーローになりたいだけなんじゃないの?」
「校長が、キャンプの前に言った言葉、覚えてるか?」
「キャンプを途中でやめたら退学だって?ふざけてるよ!それに、今はそんなこと言ってる場合じゃないよ!」
「校長はこうなる事を知っていたのさ。」
「やっぱりそうでしたの!?でも、その筈ですの!!大魔法使いグラン・ドラジェが先の事が解らないなんて有り得ないですの!!」

知っているなら、何故自分達を危険に巻き込むような事をするのか、シードルの頭は真っ白になった。

「……どうして…?どうして、そんな……!?」
「校長は俺達を信じてるのさ。」
「信じてる…!?」
「俺達が乗り越えなければならない何かがあるんだ。大人達では、もう変えられない何かがあるんだ。
校長は、俺達にそれを伝えようとしているんだ。そして、信じてる。」
「信じてる……僕らを信じてる…。」
「イコウゼ、シードル。シンライニコタエヨウ。」

しばらく何も言わなかったが、シードルはやがて小さな声で呟いた。

「イヤだ……。」
「ハァ。しょうがないな。」
「僕はここに残る。信じてくれなくていい。むしろ僕は、大人達が助けに来てくれることを信じるよ。」

そう言って、シードルは4人から遠ざけて行った。

「シードル……。」

ミエルはシードルに手を伸ばそうとしたが、カシスに腕を掴まれた。

「行こう。もういいよ。それに、ここに残るのも自由だ。止めはしないさ。」
「でも……。」

何かを言おうとしても、カシスはミエルを連れてどこかへ歩いていった。
遠くへ行きながらもミエルはシードルをずっと見続けていた。

 
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