レーミッツ宮殿から離れ、イベンセの岩場から南のほうにあるロッシュの川べりに着いた4人。
川底まで見えるほどの透明な水が流れていて、その周りを取り囲んでいる草や木の葉が風に揺れている。
とても癒されるその景色に混ざって長い銀色が太陽に照らされ光っていた。
「…あれって…。」
「カシスちゃんですの!!」
「丁度良い!!ショコラはあいつに任せよう!」
長い銀色の髪、明らかにクラスメートのカシスだった。カシスもペシュ達の声に気付き彼女達のいる方へ振り向いた。
「レモンにブルーベリー!!ミエルにぺシュ!!無事だったんだな!」
「あと、キルシュとアランシアとピスタチオがいるわよ。東のほうに、魔バスが来てるんだけど、そこにいるわ。」
「魔バス!!そんなモンまで来てんのか!!」
予想外の物まで来ている事に驚くカシス。とりあえず、互いの無事を確認した所でレモンが本題に入った。
「それよりショコラがドワーフに攫われたんだ!!助けなきゃ!!」
「見掛けたのか!?どっちだ!?」
カシスはショコラを見かけたと聞いた途端真剣な声になった。どうやら、カシスもショコラを探していたようだ。
「宮殿の裏門の西の方ですの!キード・モンガに向かったみたいですの!!」
「なんてこった!!なんで後を追わないんだ!!」
「しょーがねぇだろ!!ドワーフが通してくれないんだから!!」
「それに、私たちはカフェオレを助けに行かなきゃいけないの。」
「カフェオレか………。忘れるところだった。あいつは、オーブンに改造されてチーズの塔でチーズケーキを焼いてるぜ。」
なんと、カフェオレはオーブンにされてしまったのだ。
腹を開けられて部品にされそうな所を逃げ切れたと思えば今度はオーブンだなんて。カフェオレも哀れなものだ。
カシスもカシスで、居場所を知りながら助けようとしないなんて、しかも忘れかけてるなんて、あまりにも無責任すぎる。
「おめぇこそ、なんで助けてやらねぇんだよ!!」
「チーズの塔は、厄介なんだ。後回しだ。」
「そんな事言って、本当はカフェの事なんてどうでもいいと思ってるんでしょ?」
「ちげーよ!!酷い言い方だな!!」
ショコラを探してるカシスは流石にカフェオレにまで気を遣う余裕は無い。
だが、ミエルにはそんなカシスが無責任な人にしか見えなかった。
「二手に別れよう。俺がショコラを追う。お前たちはカフェオレだ。」
「言われなくったってそのつもりよ!!」
命令口調のカシスに不満を感じたブルーベリーは鋭く返した。
「OK、カフェオレは任せたぜ。無事に元の世界に帰ったらデートしような、ブルーベリー。」
「嫌よ!!」
「それじゃ、アランシアでも誘いますか。それじゃあな!」
クラスメートが危険に巻き込まれてるって言うのに何を呑気な事を言ってるのだろうか。そうゆう所は彼らしいが。
遠ざかるカシスを見ているブルーベリーは実に機嫌が悪そうだった。
「何よ。誰でもいいんじゃない。」
「からかわれてるだけよ。相手にしなくていいよ。」
「行こう。カフェを助けに行かないと。」
カフェオレを探しに再び足を運ぼうとした瞬間、何をしに来たのかまたカシスがやって来た。
「そうそう、この先に虫好きのブッ壊れた男がいるぜ。」
「セサミがいるの?だったら勝手に連れて行きなよ。」
「お前等が誘ってみな。ついて来るかどうか。」
「あの子一番年下なのよ!!何かあったらどうするの!?」
「まあまあ、怒るなって。」
カフェオレをほったらかしにし、最年少のセサミまで野放しにた事を聞いてとうとうミエルは堪忍袋の緒が切れた。
カシスが宥めようとしても、原因の元となった人に宥められてるだけで逆効果である。
すると、何を考えてるのかカシスはミエルの頭にポンと手を載せた。
「何!!」
「ま、お前は死ぬなよ。お兄ちゃんと妹との約束だからな。」
「はあ!?」
「じゃあな!!カフェオレは任せたぜぇ!!」
そして、カシスは今度こそ本当に4人から遠ざかっていた。
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