マジバケ小説 | ナノ


宮殿の外に出ると、目の前にレモンが倒れていて、それを見たペシュが慌てて走り出した。

「レモンちゃん!!大丈夫ですの!?」
「ツウ……っ!!油断した……。」

いきなり起き上がったレモンが最初に言った言葉はと言うと。

「あのエニグマ〜!!ブッ殺してやる!!」

とまあこんなものだった。レモンらしい反応にペシュは思わず笑ってしまった。
とりあえず、無事だった事にクラスメートは安心した。

「フゥ〜。相変わらず怖いお姉さんだ。」
「エニグマはもういないわよ、レモン。」
「いない?いないってことは……お前達でやったのか?」
「そーゆーことだっぴ。先を急ぐっぴ。」

驚いた表情になってるレモンにピスタチオは誇らしげに胸を張っていた。
落第寸前の自分がエニグマを倒せて鼻高々のようだ。

「カフェオレはどこに行ったっぴ!?」
「裏門のドワーフ達が古代機械がどうのと言ってたから…その先にいると思う。しかしこれじゃ人数が多すぎやしないか?」
「確かに、あまり人数が多いと逆に危険だ。」
「一部は魔バスで待機した方がいいかもね。」

ミエルの提案を聞き、皆はブルーベリーに目を移した。
元々体が弱いし、宮殿でも体調を崩した彼女の事を考えると、魔バスで待機させたほうがいいと判断したのだった。
だが、それに気付いたブルーベリーは目を見開いたまま叫びだした。

「私、残るのはイヤよ。戦うわ。」
「ブルーベリーちゃん……。」
「ありがとう、いつも気を遣ってもらって。でも私だけ残るのはイヤ。絶対にイヤ!」
「気持は分かるけど、体は大丈夫なの?」
「心配しないでよ。大丈夫に決まって……うっく……。」

話を終えるよりも前に蹲るブルーベリーを見てレモンは溜息を吐いた。

「駄目じゃん。ペシュ、キルシュ、彼女を魔バスまで連れて行ってあげて。」
「のけ者にしないで!!私だってやれるわ!!」

ペシュの手を振り払ってブルーベリーは立ち上がった。
彼女の叫び声には単なる悲しみだけではなく怒りや苦しみも込められていた。

「レモンちゃんはそんなつもりで言ったわけじゃないですの〜。」
「どんなつもりか知らないけど……いつも私だけ置いて行かれるのはイヤ!!」
「やれやれだね。お嬢様。」
「そんな言い方しないで!!確かに私……生まれつき体は弱いけど、でも、そんなこと気にしないで普通に接して欲しいの!」
「出来ないよ……特に今は酷い有り様だ。ヘタすりゃ、あんたを死なせることになる。」
「私に、一生皆から外れて生きて行けって言うの!?
小さい頃からずっと、パパやママからお前は長生き出来ないって言われてきたから、私、死ぬのなんて怖くないよ!長生きしたいなんて少しも思ってない!!
ほんの少しの時間でも、皆と一緒にいたいの!!親友でしょ!?レモン!!」

いつも教室で1人で皆が遊んでいるのを見ていたブルーベリーにとって仲間はずれにされる事はとても寂しくて、悲しい事。
だから、彼女は1人になりたくない、もっと皆と一緒にいたいと強く思っていた。その思いを声に変えてブルーベリーは叫んでいる。
が、レモンも彼女に言いたい事があった。

「ブルーベリー…私達、本当に親友だった?」
「それは…あなたがどう思ってるか知らないけど、私は親友だって思ってた。それすらもいけないって言うの?」
「それじゃ、どうして親友の私にいつも隠し事をするの?」
「隠し事?私が?」

何を言ってるのか解らないと言ってるような顔になってるブルーベリーを見てレモンは怒りの表情になった。

「あなた、体の具合が悪い時も何も言ってくれないじゃない。何も頼ってくれないじゃない。
私がいつも心配してるのに、自分だけで抱え込んじゃってさ。そんなの親友じゃないよ!!なんで何も言ってくれないんだよ!!」
「!!!!だってそれは…。」
「うるさい。」

何か言おうとしたブルーベリーを低くて冷たい声が止めた。
その声の持ち主は、今まで彼女にそんな声を出した事がない、そして今のように冷たい視線を放った事が無いミエルだった。

「…今何て言ったの!?」
「うるさいって言ったの。さっきから聞けば自分勝手な事ばかり言って。死ぬのが怖くない?ベリー姉はそう思うかも知れないけど他の人はそうじゃないの!
レモンも皆も、ベリー姉とずっと一緒にいたいから体の事気にしてるの!
長生き出来ないと言ったかも知れないけど、それでも長生きして欲しいと思うのが両親なの!
キャンプに行ったベリー姉の帰りを待ってる両親が、遺体を見た時どんな思いするか、考えた事はあるの!?」

しばらくして辺りは静かになった。特にブルーベリーは言おうとしていた言葉を言えず、ただ下を向いていた。
この重い空気を、長い沈黙を打ち破ったのはレモンのデコピンをする音だった。

「全く、今のは言いすぎでしょ?でも、言ってる事はもっともだよ。
ブルーベリー、一緒に行くのは構わない。でも、条件があるわ。体の調子が悪い時は、すぐに言うこと。
自分だけで抱え込まないで、ちゃんと、私や皆を頼らなきゃダメよ。それを守れるなら、もうあなたを1人で待たせたりしないわ。」
「ありがとう……あの、ごめんね、私……迷惑ばっかかけて……。」
「OK。行こう、ブルーベリー。」

ブルーベリーはようやく自分も皆と一緒に行動できる事が心底嬉しかった。だが、まだ肝心な事が解決していない。

「しかし、大人数が危険なことに変わりないよな。ねぇ、ミエル。カフェオレのことは、私達にまかせてほしいの。
私と、ブルーベリーとぺシュ、3人で、なんとかカフェオレを連れて帰るわ。いいでしょう?」
「……うん。」

さっきまで冷たい目をしていたミエルも笑顔になった。彼女を除いた3人もレモン達がカフェオレを探しに行くのに反対はしないようだ。

「ミエルちゃんも一緒に行きますの!!」
「…え?」
「ミエルも……?そうね、ミエルには特別な何かを感じるし、一緒にいてくれた方がいいわね。」
「でも…いいの?」
「いいに決まってるでしょ?怒鳴った事で何だかんだ言ったりしねぇよ。むしろすっきりしたよ。」

こうやってカフェオレはこの4人が探しに行き、キルシュ達は魔バスで待機する事になった。
目指すは裏門。迷路を抜け出して早速カフェオレを探しに出発だ。

「にしても、ミエルのあんな顔初めて見たな。」
「ん?どんな顔だったの?」
「鬼みたいでしたの!すっごく怖かったですの!」
「ミエルが本気で怒るとあんな風になるのね。」
「怒ってなかったよ。」
『嘘つけ(ですの)!!!』

to be continued……

 次
(6/6)
戻る
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -