マジバケ小説 | ナノ


「トルティーヤは?」

エニグマと戦ってるもう一組の方へ振り向くとそっちもようやく止めを刺したようだ。
これでようやく、宮殿にいるエニグマをすべて倒したのだ。

「トルティーヤちゃん!!」
「皆無事か!?」
「大丈夫。生きてるわ。」

両方とも体に散々な傷が出来てしまったが、死者1人出ることなくエニグマを倒せた。
喜ばしい状況に親衛隊はトルティーヤに微笑んだ。

「ムスコさん……助かりやした……あっしら助かったっす!!」
「そう……エニグマが死んで……俺達は助かった……。」
「そうですともムスコさん!!あっしら助かったんだ!!
村長ワンドはなくなったが……しかしそんなモノ!人の命に比べリゃ、へみたいなモンだぁ!!」

興奮してる親衛隊とは逆にトルティーヤは暗い顔をしていた。そして、次の瞬間、彼は鋭い声を出した。

「助かったから何だって言うんだッ!!戦わなければ生きていけないなら、なぜ俺は愛の大使なんかに生まれてきたんだ!!俺はもう……愛の大使なんかじゃない……生きてる資格なんてない!!」
「トルティーヤ、あんたは英雄だ。胸を張れよ。」
「ハッ!この俺が英雄か!村へ帰り、皆の前で『俺を見ろ、俺がしたように戦え』そう言えばいいのか!?」
「誰もそんなこと言ってないっぴ。」

例え村長としてではなくても、村を守るためにいずれ誰かがやるべき事を自らやると言う勇敢な気持ち。
その気持ちがあってからこそトルティーヤは『英雄』だ。だが、愛の大使である彼は、そんな自分自身を受け入れられなかった。

「トルティーヤ。」

ミエルがトルティーヤに優しく声を掛けた。

「あなたは愛の大使としての自分を捨ててまで村を守ろうとした。今まで信じてきた事を押し潰す事はすごく大変な事なのに、そうする事が出来たあなたはとても勇敢な愛の大使よ。今回の事は辛いかも知れないけど、あなたの村を大切にする思いは、村の住民にちゃんと届いてるはず。」
「……。」
「あまり思いつめないでトルティーヤさん。私もぺシュとの付き合いが長いし、愛の大使の考え方はよく解るわ。ありがとう、トルティーヤ。」
「あたしも感謝してますの!!ありがとうですの!!トルティーヤちゃん!!」
「センキュ〜。トルティーヤ。俺も感謝してるぜ。」
「ありがとう!ムスコさん。」

次々と礼を言う魔法学校の生徒達を見てトルティーヤは少しずつ笑顔になった。

「ムスコさん!!あっしらも、それからこっちの犬ちゃんも感謝してるです!」
「犬ちゃん…。」
「トルティーヤ殿、村へ帰りましょう!!ワクティ村の村長として!!」
「ありがとう親衛隊、それに皆。」

トルティーヤは入り口の方へ背を向けたが、やがて何か思い出したように振り向いた。

「そこの帽子の少女。」
「…私?」

ミエルを見ていたトルティーヤはイタズラっぽい笑顔が浮かんでいた。

「お前はもう少し、自分に気を使ったらどうだ?いくら強いからとは言え、お前もまだ子供だからな。」
「!!何よ!!そう言うあなたこそ子供の癖に!!」

頬をプーッと膨らませてるミエルを見てそこにいた全員が思わず笑ってしまった。

「じゃあ、またどこかで会おう。」
「トルティーヤ殿!!」
「お待ち下さい!!」

自分を追ってくる親衛隊と共にトルティーヤは宮殿から去って行った。
これから彼がどうするか、どんな愛を学べるのかは、彼次第だろう。

「後味悪いっぴ……。」
「仕方がないことですの。エニグマが敵だとは言っても、相手が死んでることに変わりはないですの。」
「行こう。レモンとカフェオレを探しに。」
「そうね。それと答えを探しに。どうしてエニグマが私達をねらうのか、ハッキリさせないと今の気持ちを変えられない。」
「ブルーベリー大丈夫?」
「かなりやられてるっぴ。」
「大丈夫よ。それよりレモンは?あいつを追ってた筈よ!!行きましょう!!」

 
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