マジバケ小説 | ナノ


「逃げなかったって事は、覚悟が出来たってことかな?」
「お前は!!ティラミスッ!!」

いつからいたのか柱の影からティラミスが現れた。そんな彼の所にミルフィーユはただ近付いた。
「彼らのことは気にしないで。私たち2人で話しましょう。」
「ミルフィーユ!!」

ミルフィーユを止めようとする中、ガナッシュだけは出口の方へ歩き出した。

「ナイトホーク?」
「他人のことに首をつっこんでも話をこじらせるだけだぜ。俺達は他人で、2人の本当の事情なんて、解りやしない。
そんなことより、今は他の友達をさがす方が先だろ?俺は行くぜ。じゃあな。」
「ガナッシュ〜!」

アランシアが止めてもガナッシュは遠ざかるだけだった。
だが、残りの4人は目の前で誰かが殺されるかもしれないのにそれを無視する事なんて出来なかった。
そんな中、ミルフィーユは覚悟を決めたような表情でティラミスを真っ直ぐ見つめていた。

「もう、パペット同士で争うのはイヤ。私のハートが欲しいなら、あなたにあげるわ。でも、それっきりにしてッ!」
「ミルフィーユ!ダメだっぴ!それって、凄い事だっぴ!」
「そうだ、ミルフィーユ! 俺たちが証人になる。ソイツを村長の前に突き出せ!」
「…そんなこと、出来ない…。」
「出来ないって…どうして〜どうしてなのよ〜?」
「彼を村の男たちに差し出して、私は彼が、村の人たちから石を投げられたり殴られたりする姿を見なければいけないの?」
「しょうがないよ。それがルールなんだ。」
「そんなルールなんて嘘!悲しくなるのはイヤ!悲しい気持ちばかり心に詰め込んで生きていくのはイヤ!!」

自分が殺されるかもしれないのにミルフィーユは今でもティラミスの事を考えてる。
どんなに止めても自分の意思を捨てようとしない。そんな強くて優しい心を持った彼女を見てる人の目は少し揺れていた。

「…ミルフィーユ…宿屋で待つ…お前は必ず来る…信じてる。」

そう言い残すとティラミスは彼女のいる所から遠ざかろうとしていた。

「待って…ティラミスさん。お願い、もう止めて!こんな事弟さんだって望んでないはず!大切なお兄さんが人を殺す人になるなんて望んでなんかないはずよ!」

一瞬、ティラミスの肩がビクリと動いた。本当は彼だって望んでないはず。
昔はあんなに優しい彼がそんな事望むはずなど無い。そう信じたかった。
だが、ティラミスは無言のまま村へ帰って行った。

「逃げる気だっぴ!!」
「ほっとけ!それよりも、ミルフィーユ!一緒に行こう。」
「そうだよ〜戻ると殺されちゃうよ〜。」
「ありがとう。優しいんですね。でも、私は村長の孫です。村を守らなければいけないの。さようなら!」

ミルフィーユは迷う事なくティラミスを追った。

「あ〜あ…ミルフィーユ、バカだっぴ…」
「全く!やってらんねぇよ!!」
「え〜そんなぁ〜追い掛けなきゃ〜。」
「ミエル。行くか戻るかミエルが決めるっぴ!!」
「…私は行く。やっぱり放っておけない!」

余所者かもしれない。それでも誰かが危険な目に会うことをただ見てる事など出来ない。
ミエルを始め、4人は再びトルーナ村へ駆け出した。

遠ざかる4人を後ろで眺めていた少年は深い溜め息を吐いた。

「やれやれだな。」

 
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