マジバケ小説 | ナノ


トルーナ村の住人の先祖が作ったと言うベナコンチャ遺跡。
所々が欠けている古い遺跡は、まるでその歴史を物語っているようだった。

「どこ見て歩いとるんじゃ!」
「ぴっ!?こいつなんだっぴ!?」

歩いてる途中遺跡の上で泳いでるピラニアにぶつかり、突然怒鳴られたピスタチオはピョンと跳ねた。

「10ブラー払いやがれ!!」
「何だこいつ、ピスタチオほっとけ。」
「払えっつってるだろ!!」

何度も払えと叫ぶピラニアを無視しながら歩くキルシュとピスタチオ。
どんなに無視しても静まらず、結局アランシアが変わりに数十ブラーを払った。

こんな騒ぎが起きる中でもミルフィーユはただ黙々と歩くだけだった。
その目には『悲しみ』だけでは収まらない複数の感情が篭っているようだった。

「ミルフィーユさん、辛そうだね〜…。」
「当然だろ?あんな事があったんだから。」
「ティラミスは悪い人だっぴ!!今度会ったらオイラがギッザギザに…」

ピスタチオが言葉を終えるよりも前にキルシュが頭を殴った。
あれ程大声で叫んだらきっとミルフィーユにも聞こえるだろう。勿論、ミエルにも。
キルシュはぼんやりとした顔で歩いてるミエルに近づくと、肩をポンと叩いた。

「元気出せよ。」
「…あなたはいいよね。いつも元気なんだから。」
「お褒めの言葉どうも……じゃなくて!まあ、気持ちは解るけどよ。いつまでもそんな暗い顔したって何にもいい事無いだろう?」
「何が言いたいの?」
「あんまり思いつめるなって事だよ。今はああでもさ。昔はいい奴だったんだろ?」

宿屋に行く時ミエルに散々聞かされた光のプレーンの話。
その中でもトルーナ村の話は聞き飽きる程聞かされていた。
ミルフィーユやティラミス、2人と一緒に遊んだ思い出等々。
それを先程の事件のせいで忘れてはいけない。そう言っているようだ。

「……うん。」
「よし!じゃあ行くかぁ!!」

しばらく歩いて長い階段を登ると、祭壇の左に廊下が続き、入り口にあった物と同じ形をしたオブジェが見えた。
だが、祭壇のど真ん中に、巨大な鳥がいて見事にその道を塞いでいた。

「怪鳥スノウヘアよ。今までに、何人もの旅人がこいつの犠牲になったわ。でもあなた達ならきっと大丈夫。」
「こいつを倒したらミルフィーユも一緒に行こ〜。」
「だめよ。ティラミスを放っておけないわ」
「だからって君を一人で帰すわけには行かない。
ティラミスの奴がどこかで待ちぶせてるかもしれないじゃないか!」
「これは私達の問題だって言ってるでしょ?」

ミルフィーユは最後まで断った。自分が殺されるかもしれないのにそこまで決意が固いのは村を思う彼女の優しい心のせいだろうか?

「もう行くぜ。もたもたしてる暇はないんだ。」
「ガナッシュ〜、酷いよ君〜。」
「神様に信じなよ。全てを取り計らってくれるよ。人生に耐えられない事なんてありはしないんだ。」
「向こうはやる気満々じゃねぇか?行くぜぇ!」

キルシュの叫びに5人が構えると、スノウヘアは羽をバタバタさせながら大きな風を作り出した。

「ぴーっ!!吹き飛ばされるっぴ!」
「こんな程度で飛ばされてたまるか!!ホットグリル!!」

キルシュが火の魔法を放ったが、スノウヘアはとてもあの体で出してるとは思えない程のスピードでそれをかわした。

「マッハライン。」

ミエルがマッハラインをキルシュに掛けた。
スノウヘアは風属性のため、ミエルの魔法は大きなダメージを与えない。今の彼女に出来るのはこの程度だった。

「魂のレクイエム〜!」

そして、アランシアの音の魔法がスノウヘアに放たれた。うまくいけば眠らせる追加効果がある。
さすがに眠らせるまでは到らなかったものの少しひょろひょろしてるのを見ると効果はあったようだ。
それをチャンスにガナッシュとキルシュがそれぞれ自分の魔法を放ち、見事に命中していく。

「とどめだ!!ヒートヒョンデュ!!」

キルシュが放った炎がスノウヘアを包み、悲鳴を出しながら遺跡へ落ちて行くスノウヘアはその場で真っ黒になってしまった。

 
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