マジバケ小説 | ナノ


禅部屋でピスタチオは小さなロボット、マジックドールのカラマリィに向けて何度も魔法を放ったが、ポンと音が鳴るだけでビクともしなかった。

「ぴーっ!!何で倒れないっぴぃ!?」

泣き喚いてるピスタチオから次々とどんぐりが出てくるが、先ほどの繰り返しが続くだけだった。結局何もかも諦めたかのようにピスタチオはその場でへたばってしまった。

「やっぱり駄目だっぴ…オイラ落第だっぴ。」
「もう少し頑張ってみようよ。魔法も大分上手くなってるよ。」
「どこがだっぴ!?全然効いてないっぴ!!」

ピスタチオに元気付けようとミエルが励ましたが、それが逆にピスタチオを余計に落ち込ませてしまった。
そんな中、突然ドアのほうから雷のような音がなったと思えばやけに熱気を出しているキルシュ・ピンテールと彼といつも一緒にいるセサミ・アッシュポッドが入って来た。

「ピスタチオ、ミエル。何やってんだ!?もうバスが来るぜ!」
「おはよう。今日は早いね。」
「当たり前だ!!今日からキャンプなんだぜ!!」

これから行くキャンプを一番楽しみにしていた2人は普段よりもずっと盛り上がっていた。だが、ピスタチオはそんな2人の会話に気楽に入れなかった。

「オイラ、キャンプには行けないっぴ…キャンプなんか行ってたら、オイラ落第するっぴ!!」
「だったらキャンプで特訓すればいい話だろ?俺が鍛えてやるよ。」
「2回もダブった兄貴が!?」
「何だよ!!関係ねぇだろうが!!って、ミエルもそんな目で見ないでくれよ!!」

何とかピスタチオを励まし、キャンプに行かせようとしているキルシュ。だが、彼も成績が余りにも酷いものでピスタチオは勿論、セサミでさえ彼が鍛える事を余り望んでいない。
ミエルは目を大きくしたままセサミに怒りをぶちまけているキルシュをただ見つめていた。

「いいよな〜。何でも出来るお前はよ!秘密とかあるのか?そのペンダントの中に何かがあるとか!?」
「…何でそうなるの?」

ミエルが付けているガラス石のペンダントに何かがある筈がない。訳の解らない事を言うキルシュだったが彼の気持ちも何となく理解できる。
ミエルは学校に来て半年しか経っていないのに魔法の実力はほぼトップで、最初は普通だった他の成績もぐんぐん上がっている。そんな彼女を見ると妬みたくもなるだろう。

「落第は嫌だっぴ!!落第したらママが学校を辞めさせるっぴ!!」
「じゃあナイトホークに鍛えてもらうのは?」
「それだけは勘弁だっぴぃ!!」
「ペシュでいいんじゃねぇ?」
「オイラを殺す気っぴか!!」

落第は嫌だ、でも鍛えられるのも嫌だ。そんなピスタチオの我が儘に全員は溜め息を吐いた。

「オイラ、やっぱりここでトレーニングするっぴ。オイラの分まで楽しんでほしいっぴ。」
「そうはいくかよ!?さっさと行こうぜ。」

キルシュとセサミがピスタチオの腕を引っ張っても、ピスタチオはその場からなかなか離れようとしなかった。

 
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