マジバケ小説 | ナノ


ミルフィーユの後に続いて着いた所は、人に似た形をしたオブジェが建っている古い広場のような所、ベナコンチャ遺跡の入り口だった。

「あれがベナコンチャ遺跡〜?」
「あれは入り口。遺跡は空にあるの。」

さっそく遺跡に行くために入り口の方へ行こうとした時だった。

「やぁ、ミルフィーユ。」

柱からティラミスが現れた。宿主の彼が何故ここにいるのだろうか?

「また1人死んだね。どう思う?」
「どう?って、どういうこと?あなたは悲しくないの?」
「そうか…。つまり、キミは悲しいんだね?」
「当たり前じゃないの!! 仲間が死んだのよ!!」

怒鳴りだすミルフィーユの言葉を聞いてティラミスはニヤリと笑った。
村に倒れたパペットの死体を見た時と似ている笑顔で。

「当たり前…? 当たり前なんかじゃない。君の中に、ハートがあるってことさ…。」
「????なに????どうしたの?ティラミス…。」
「生き物は、ハートがなくなったり、壊れたりした時に死ぬんだ。逆に言えば、死んだ生き物でもハートを入れてやれば動き出す。お前のハートが欲しい…弟を生き返らせたいんだ…。」

宿屋に置かれてるパペット、自分の弟を生き返らせたい。ティラミスの言葉をミルフィーユは理解出来なかった。

「何を言ってるの…? 死んだのよ、あなたの弟…。」
「死んだんじゃないッ!! ガケから落ちた時のショックでハートが壊れたんだ! ハートを入れたら生き返る!弟はもう200年も止まったまま何も出来ないんでいるんだ!! ハートをくれ!!」

ティラミスはミルフィーユの首に手を掛けて、どんどん手に力を入れた。

「や、やめて…。く、苦しいわ…。ティ…ラミ……。」
「おおっと!抵抗するんじゃないぜ! お前をムダに殺したくない…。」

ティラミスの手の力が強くなればなるほどミルフィーユは苦しそうな表情になっていく。
突然起きた出来事ではあるが、黙って見てはいられなかった。

「やめて……やめてぇ!!」
「何してるっぴ!!」

ミエル達が駆けつけ、ティラミスはミルフィーユを放すと

「チッ!余所者がっ!」

怒り混ざった声で呟きオブジェへ駆けつけると、身体が空へ上がるように消えて行った。
ティラミスから解放されたミルフィーユはまだ苦しそうな顔をして咳をしていたが、幸い無事だったようだ。

「トルーナ村へ戻ろう。アイツをなんとかしなきゃ.」
「やめてください…。私達の問題なんです。余所から来た方に決めてほしくありません。」
「そんな事言ってもだっぴ!」
「こっちです。」

そう言うとミルフィーユは何も無かったかのように遺跡へと向かった。
まだ腑に落ちないが、彼等に出来る事は何も無い。仕方なくワクティ村へ行くために遺跡に行こうとした時だった。

「嘘……嘘でしょ…?」

一番最初にティラミスを止めたミエルが突然ガクンと跪いた。

「ミエル…大丈夫〜?」
「顔色悪いっぴ…。」

アランシア、ピスタチオの問いは今のミエルには聞こえなかった。
地面を見てる彼女の眼は酷く揺れていて、身体も同じ様に震えている。
ふと、ミエルは肩に温もりを感じた。ガナッシュがそっと手を乗せていたのだった。

「先に行っててくれ。すぐ追いつく。」
「うん…。早く来てね〜。」

アランシア達3人は2人を残して遺跡へ向かった。
やがて荒かった息も落ち着き、汗まみれになりながらも顔色を取り戻した。

「落ち着いたか?」
「……放して。」

肩に置かれた手を振り払いゆっくり立ち上がると、充血した目でミエルはガナッシュを睨み付けた。

「滑稽だと思ってるんでしょ?」

そう言い放つとミエルはオブジェに向かい、やがてガナッシュも後を追って2人は遺跡へと上がって行った。

 
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