マジバケ小説 | ナノ


出口の近くまで行くと先程入り口で会ったアランシアが立っていた。相変わらず不気味な表情で。

「上手いことエニグマの手から逃れているようだね……くっくっく……。」
「アランシア!どうしたっぴ!?目つきが怪しいっぴ!?」
「光の中ならエニグマからも逃れられるだろうけど、わざわざこんな闇の中まで友達を追ってくるなんて自惚れてるのかな?」
「エニグマ?海岸で襲った奴等っぴか?」

疑問を抱いた顔になってるピスタチオを見てアランシアはさらに不気味な笑みを浮かべた。

「何も知らないんだな。まぁ、いいだろう。エニグマは闇から生まれた生き物で、すさまじい魔力を持っている。
敵にまわすと怖い存在だが……味方にすれば、無敵の強さを手に入れることになる……。」

『強さ』と言う言葉に反応したピスタチオは体をビクリとさせた。

「強くなれるっぴ!?どうすればいいっぴ!?」
「簡単さ。体を貸してやるだけさ。融合するのさ」
「ゆうごう?」
「ああ、そうだ。もう少し傍に来なよ…教えてやるよ…。」

ピスタチオがアランシアに近付くとミエルが制した。

「なるほどね。道理で可笑しいと思った。変身能力は凄いわね。
でも、何の警戒も無く能天気に融合の話を切り出すなんて、あなたも自惚てるのね。エニグマさん。」
「!!!」

アランシアが驚いた隙を逃さず、ミエルは拳で彼女を強く殴り飛ばした。

「な……何故?」
「目障りなのよ。あなたの周りをぶよぶよと飛んでる子が。」

アランシアの周りを飛んでいる子、それは彼女の属性である音の精霊ではなく、海岸でエニグマの周りを飛んでいた闇の精霊『ニルヴァ』だった。

「!!見えるのか?」
「そろそろ正体をばらしてもいいんじゃないの?他の人もこっちに来てるみたいだし。」

ミエルが話を終えた刹那、

「ピスタチオ!離れろ!」

大きな叫び声とともに現れたのはキルシュとアランシア。

「そいつはアランシアじゃない!偽物だ。」
「いや〜ん、あたしってあんななの〜?」
「あう?あうあ〜?」

状況を把握出来てないピスタチオは頭がこんらんしていた。
その時、偽のアランシアが立ち上がると、不気味な声を出しながら笑い出した。

「仕方ない、力ずくで奪ってやるッ!」

アランシアに化けたそれはだんだん体を歪めると海岸に来たエニグマより大きくて角が生えてるエニグマに変わった。

「ケッケッケッケ…。せいぜい楽しませてくれよ。」
「いや〜ん。エニグマってやっぱり気持ち悪い〜。」
「ほんとだっぴ!!気持ち悪いっぴ!!」
「何呑気に話してるんだよ!ホットグリル!!」
「いい加減戦って!こっちだって大変なのよ!!噛むな!!」

能天気にエニグマの感想を言ってるアランシアとピスタチオ。
その2人にエニグマに魔法を放ち続けてるキルシュと周りにいるダミーゴースト達を蹴り飛ばしているミエルが怒鳴り散らした。
ミエルの腕をガブリと噛んだ1匹は壁の方へヒューンと飛んでそのまま気絶してしいまった。

「コールスティック!どんぐりんこ!!」
「魂のレクイエム〜!」

次々と魔法を放たれ、エニグマも少しぐらついていた。しかし、

「くっくっく。コールニルヴァ。」

エニグマがニルヴァを呼び、呪文を唱えていた。闇の魔法は魔法の中で一番強い。
おまけにニルヴァまで呼ばれてしまったら、勝ち目はない。

「終りだ。ミジョテー。」
「やばい!!ピスタチオ、逃げろ!!」
「ぴーーーーーっ!!!」

エニグマの魔法がピスタチオに向かって放たれた。
今まで何度も逃げ切れたものの、体力が限界な今は流石にきつい。と、思った瞬間だった。

「なっ!!馬鹿なっ!!!」
「ぴっ??」

エニグマの言葉を聞いて強く瞑っていた目を開けると、いつの間にかピスタチオの前にはミエルが立っていて、
その周りには黒に染まった竜巻が彼女を取り囲んでいた。エニグマが放った魔法を風の魔法で吸収したのだった。

「相手が悪かったみたいね。まあ、こっちはそれなりに楽しんだけど。」

話を終えたとたん、竜巻は槍のようにエニグマを貫き、エニグマの体がドンと音を出しながら倒れた。が、

「ちくしょーーーーッ!!体が重い!!やはり光のプレーンでは力が出ぬわ……!こうなったら1人ずつ!」
「!!!キルシュ!!」

残ってる力を使って立ち上がると、そのエニグマはキルシュに飛びかかった。

「うぉぉおおッッ!? なんだよッ!!?」
「キルシュがっ!!」
「キルシュっ!!」

エニグマがキルシュの足を掴み、そのままキルシュはヴァレンシア海岸の時と同じように居なくなってしまった。

「融合してやる!!奴と融合すれば……!!お前らなんぞに負けん!!」

そう言い残し、エニグマは姿を消した。

「あわあわあわ!!大変なことになったっぴ!」
「ピー君、落ち着いて。慌てても何も始まらないよ。」
「そうよ。それにキルシュなら大丈夫よ!この洞窟を出ると村があるの。そこへ行きましょう!!」

大丈夫だと言っても、のんびりとしたアランシアの口調が変わっていた。やはり彼女も心配しているようだ。

「トルーナ村か……。」
「あれ?ミエル知ってるの?」
「ここには、小さい頃何度も来たことあるから。」
「アランシアは何で知ってるっぴ?」
「キルシュと2人で皆を探してたの!大変だったんだから!」
「とにかく急ぐよ。話してる間にキルシュに何かが起きるかも知れないでしょ?」

やがて3人は洞窟を抜け出した。1人のクラスメートの無事を祈りながら。

to be continued……

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