マジバケ小説 | ナノ


授業が終わって放課後、キャンディは資料を探すために図書室にいた。
学生の頃と比べて明らかに本の数が多くなっている。
ふと本を探している時、ある本が目に映った。
今では学校で最も重要な情報源となってる分厚いその本は、今まで誰も見つける事のできなかった様々な知識を与えている。
その本の文字の一つ一つにキャンディは目を離す事が出来なかった。
見覚えのある筆記体、所々のページに描かれた見覚えのある精霊のイラスト、その本を書いた作家は、彼女の親友であるミエルだった。
卒業後、人々の助けになるための様々な知識を求めて1人で旅に出て数年後、ミエルは数々のプレーンを渡りながら得た知識をこの本にまとめ、この学校に送ったのだ。
彼女の行方が分からない今、彼女がいた証となるのはこの本しかない。
気が付けばキャンディは近くの席に着き、その本を読んでいた。
1つの文章を読む度にミエルが行った場所、やった事、出会った人々達が目に浮かぶようだった。

時が流れる事にも気付かず本を読み終え、ふと辺りを見回せば、いつの間にか外はもう暗くなっている。
本を戻し、再び資料を探すために立ち上がろうとした時だった。
周囲が少し明るくなったと思い顔をあげると、仄かに光る白い光りが目に映った。
一瞬蛍なのかと思ったが、やがてその光は小さな粒となって消えていく。その現象を見てキャンディは思わず目を見開いた。
かつてある人が見せてくれた時と似たその現象。それに気付いた時、キャンディは思わず図書館を飛び出した。
学校中を走り回り、教室や音楽室、学校にあるすべての部屋をさ迷っている内に、まだ行ってない場所は後1つとなった。
すべての始まりとなった場所、学校の中で最も多くの思い出に満ちた場所。その場所の扉をキャンディはゆっくりと開けた。
庭の優雅な風景を絵にした和風のデザインの禅部屋。
穏やかな気持ちにさせるその庭は、キャンディの期待を裏切るかの様にいつもの光景を見せているだけだった。
自分の思い込みに過ぎないと悟ったキャンディはそのまま禅部屋を立ち去ろうとしていた。

ふと、何か小さな物がキャンディの目に映った。
光ってもない、特に何の特徴もないが、部屋のど真ん中にポツンと置かれた小さな存在から何故か目が離せなかった。
ゆっくりと近づいて見れみれば、それはどこにでもありそうなまつぼっくり。
他のまつぼっくりと何の違いも無い筈なのに、それを見ると、何故かキャンプの時を思い出す。
彼女は参加しなかったが、キャンプの時の探検をして、見つかった宝物と言うのがこのまつぼっくりだった。
今思うと、それもまた1つの思い出と言えるのかもしれない。そう思った時、キャンディはここにミエルがいたと悟った。
その時の探検に参加して、思い出を持っている彼女だからこそ出来る事なのだろう。
まつぼっくりを拾い、しばらくそれを見つめていたキャンディは、やがて禅部屋の景色を見ながら小さく笑みを浮かべた。
その笑みが誰に向けられた物なのかは分からない。だが、もしそれをある人が見ていたら、同じく微笑み返しただろう。
キャンディはまつぼっくりを手に抱え、禅部屋を去って行った。
やがてその場に残ったのは、のどかな風景と、今まで魔法学校の生徒達を見守り続けていた小さな存在だけだった。

The End…

 
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