マジバケ小説 | ナノ


「キャンディ、大丈夫?」
「ええ。ありがとう、オリーブ。」

キャンディと共に闇の魔法をかわしたのは鷹の魔法を使って翼を生やしたオリーブだった。
かつては距離を置かれた2人が、今はこうして互いに協力しあっている。
だが、そんな2人をケルレンドゥはただ嘲笑っていた。

「フン!ただ群れあう事しか能が無い虫けら如きが!!」
「そうやって笑っていられるのも今のうちよ!!」

そう言うとキャンディは複数のエアを取り出した。

「魔法も使えない分際で精霊を呼んだところで何が出来ると?」
「アンタの相手はそっちじゃない!」
「何!?」

声がした方へ振り向けばキャンディが呼んだ精霊に囲まれてるミエルが風を呼び起こしている。
風の精霊の加護を受けてさらに大きくなっていく竜巻がケルレンドゥを襲い、大きな体をグラつかせていた。

「こざかしい真似を!!」

ケルレンドゥが闇の魔法をミエルに放つと、黄色い薔薇の茨城がミエルの体を巻き付き、奥へと引っ張って行った。
近くにいたシードルの美の魔法だった。
刺が多少チクっとするが、闇の魔法を受けた痛みに比べれば本の些細な事だ。
攻撃をしようと思えばかわされ、相手からの攻撃を与えられる。
いくらエニグマ最強であれど、複数を相手にするのは酷な様だ。

「何だ?もう降参か?案外大した事ねぇな。」
「チッ、1人じゃ何も出来ない虫けらの分際で調子に乗るな!!」

周りに響くほど力強い声をあげるとケルレンドゥは右手を挙げ、今までとは比べ物にならないほど禍々しい気配を装った闇を蓄えた。

「果てぬ闇に喰われ消え去るがいい!!」

すべての闇を蓄え、まるで太陽の様に大きくなっていく闇の珠を少年少女へと向けて放った。
すべてを狂わせてしまいそうな闇が辺り一面に広がると、ケルレンドゥはもちろん、そこにいるすべての存在が見えなくなってしまった。

すべての終わりを悟り、自らの勝利を確信しているときだった。
弱弱しく輝いている小さな虹色の光が出てくると、1つの大きな光になり、反撃するかのようにケルレンドゥを襲った。
予想する事のなかった攻撃を喰らい蹲っているケルレンドゥの目に映ったのは、獣の精霊ガルと共に睨み付けているオリーブの姿だった。
先程の光は、彼女自らの魔力と他の少年少女のすべての魔力を集めて作り上げたオリーブの魔法だったのだ。

「私達は負けない。何があっても、私達は屈しない!!諦めない!!」

魔法を放ったオリーブはもちろん、他の魔法使い達もその目に強い意思を込めていた。

「ほら、いつまで寝ぼけてんの?」
「かたじけないヌ~。」

気を失っていたカベルネの回りをシードルの放った白い薔薇が囲み、カベルネは意識を取り戻した。

「さっきのお返しだヌ~!!」

ある程度魔力を回復させ、カベルネは毒の魔法を放つ。
息をする事さえ困難な程の猛毒から逃れようとして時、今度は風が襲いかかろうとしていた。
だが、先程の魔法で魔力が底を着いてしまったのかそよ風程度の風が吹いてくるだけだった。

「どうした?その程度で俺を倒せるとでも思ってるのか?」
「何余所見してんだよ?」

声がしたのはちょうど真上の方。長い銀髪を揺らしながらカシスが刃の魔法を降り下ろそうとしている。
本の少しの痛みすら与えない風はカシスに気づかせないための囮だったのだ。
だが、それに気づいてもすでに遅く、切れ目のある刃がケルレンドゥを切り裂いた。

「ミエル!!」

エアを呼びながらキャンディが叫ぶと、それに応じるかのように巨大な竜巻を引き起こし、その竜巻に自らの身体を預け宙に浮かんだミエルは、今までよりもはるかに大きくて鋭い風刃をケルレンドゥに放った。
互いが助け合い、力を合わせ合う事で、相手は確実に弱っているのが見えてきている。

「よし、後少しだ。くれぐれもへたばるなよ!」
「分かってるよ言われなくても。」

こんな冗談すら言えるほどの余裕を見せる魔法使いの子供達にケルレンドゥは苛立ちに似た感覚を覚えた。

「……調子に乗るな。たかがこの程度、この身を滅ぼすにも及ばん!!最後に勝つのは闇のみ、お前等のやってる事など、ただの悪あがきに過ぎん!!」

そう言うとケルレンドゥは渾身の力を振り絞って腕を振り回した。その腕が向かった先は、未だに空中に浮いているミエルの方向だった。
突然の反撃に身をかわす暇もなく、ミエルはその大きな腕による衝撃によって吹き飛ばされてしまい、周りを覆っている赤い壁に更なる衝撃を与えられる。
それに懲りずケルレンドゥはミエルを再び腕で叩き付け、その衝撃に耐えきれずミエルはすべての力が抜けたかの様に落ちていった。

「ミエル!?オリーブ、お願い!!」
「うん!!」

オリーブがキャンディを抱えると、鷹のちからで翼を生やし、ミエルの所へと全速で飛んで行った。
ミエルに近づけば近付くほどスピードをあげ、後少しの所で届く時だった。

「もう遅い!!このまま、お前等の仲間と言う奴の無様な死に様を見るがいい!!」

そう言った途端、ケルレンドゥは複数のニルヴァを呼び、ミエルに向けて闇の魔法を放ち、丁度キャンディ達がミエルの目の前まで近づいた時、闇の魔法がミエルの身体を飲み込み、地面に叩きつけられたミエルは、身体のすべての色を失っていた。

 
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