マジバケ小説 | ナノ


すべての命が新たな生を迎えるために通ってきた再生の間。
そして、その新たな生を迎えるための入り口である蒼い空間に近づいていたのは、先ほどとは違う姿をしている化け物、ケルレンドゥだった。
大きな緑色のメロンの様な姿とは違い、人に似ていながらも圧倒的な威力を出しているその姿は、まさにエニグマの王に相応しい姿だった。
あの蒼き空間を通れば、自分は新たな命と力を得て、再び王としての生を迎えることが出来る。
生きている存在のいる世界に今度こそ力を見せるという意思を抱え、ケルレンドゥは足を運んだ。

「待ちやがれ!!」

ふと、自分が通りかかった方へ聞き覚えのある別人の声が聞こえ振り返れば、先程己に歯向かい、己と1つになろうとした少年を奪い取った子供達が追っているではないか。

「そっから先は行かせねぇ!!」
「…ふっ。自ら命を捨てに来るとは、愚かな物よ。」
「勝手を人を殺すんじゃないヌ〜!!ここで死ぬのは俺達じゃなくてお前なんだヌ〜!!」
「さっきはよくもガナッシュを奪おうとしたわねぇ!」

次々と自分を睨み付ける魔法使いの子供。だが、すでに新たな肉体と力を得たケルレンドゥにとってそれは脅しにもならなかった。

「どうやら、お前等は忘れている様だな。ここは死のプレーン。この場所で死んだら転生できない。魂は完全な無に帰してしまう。
……その恐怖に打ち勝てる者のみが死のプレーンで勝ち残る。」

威嚇するかの様に語り掛けるケルレンドゥ。だが、どんなに彼等に語っても、どんなに彼等を睨み付けても、彼等は後ずさりする事はなかった。

「そんな恐怖、最初から持ってない。私達がここで死ぬ事なんてない!!」
「……ふん、良いだろう。この場に生き残るのが誰か、ここではっきり見せてやろう!!」

突然、ケルレンドゥが大きな灰色の手を振り落とすと、構える暇も与えられなかった相手は遠くへ吹き飛ばされた。

「チッ……さっきとは比べ物にもならねぇ。」
「けど、ここで引き下がるつもりなんてないでしょ?」

自分に向けて笑うシードルにつられ、カシスもニヤリと笑った。

「…んじゃ、こっちも本気出してみますか!!」

カシスが叫ぶと同時に、シードルがパウダーを呼び出しブラックローズを放つ。
化け物の大きな体の周りを黒い薔薇と茨が囲み、動きを封じると、同じくスラッシュを呼び出したカシスが刃の魔法エクルヴィスで薔薇とともに化け物を切り裂いた。
美しく舞い散る薔薇の花びらと共に着地したカシスは相手の様子を見たが、少し呻いただけですぐに体勢を整えた。

「まだまだだヌ〜!!」

ケルレンドゥが手を振り払おうとした時、カベルネがグルヌイユを放ち、毒のガスで目を封じる。
そして、周りを彷徨っているのを隙にミエルのマッハラインで強くなったオリーブがケルレンドゥに突進した。

「……フン。言い張るだけの事はあるな。だが、この程度では俺の命を奪うには程遠い!!」

そう言い放ち、ケルレンドゥはニルヴァを呼び出した。いくら相手の数が多く、魔法の威力も大きいとは言えど所詮闇には敵わない。
今まで続いてた戦いも最早ここまでだ。そう思いながら魔法を放とうとした時だった。

「させない!!」

甲高い声が響くとニルヴァの加護を受けたヘルダイスがケルレンドゥに向かった。
同じ闇同士の魔法では与えられるダメージは少ないが、ニルヴァが消されてしまっては自分の魔法の威力を上げる事は出来ない。

「魔法も使えぬ者が、最後まで悪あがきするとは…実に愚かだ。」
「魔法が使えないからってバカにしないで!!私だって、皆と一緒に戦える。」
「くくくっ、そう強がってるのも今のうちだ!!」

ケルレンドゥはキャンディに向けて手を伸ばし、魔法を放った。夜空を集めたように黒い光がキャンディに襲い掛かろうとする。
そんなキャンディに向かって小さな存在が駆け付けると、キャンディと共に姿を消し、襲うべき対象を失った魔法は地面をむなしく叩き付けた。

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